« January 2011 | Main | June 2011 »

February 18, 2011

特許表示と損害賠償請求

①Pequignot v. Solo cup Co. 2009-1547 CAFC June 10, 2010
②Stauffer v. Brooks Brothers, Inc. 2009-1428, -1430, -1453 CAFC August 31, 2010

事件の背景
35 U.S.C. 292 False marking. (a)Whoever, without the consent of the paten¬tee, marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with anything made, used, offered for sale, or sold by such person within the United States, or imported by the person into the United States, the name or any imitation of the name of the patentee, the patent number, or the words “patent,” “patentee,” or the like, with the intent of counterfeiting or imitating the mark of the patentee, or of deceiving the public and inducing them to believe that the thing was made, offered for sale, sold, or imported into the United States by or with the consent of the patentee; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any unpatented article the word “patent” or any word or number importing the same is patented, for the purpose of deceiving the public; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any article the words “patent applied for,” “patent pending,” or any word importing that an application for patent has been made, when no application for patent has been made, or if made, is not pending, for the purpose of deceiv¬ing the public — Shall be fined not more than $500 for every such offense. (b)Any person may sue for the penalty, in which event one-half shall go to the person suing and the other to the use of the United States.
 292条は、公衆を騙す意図をもって「特許されていない物品」(またはそれに関連するパッケージまたは広告宣伝)に特許表示(例えば「米国特許X、XXX、XXX」)を使用することを禁止している。
 公衆を騙す意図が立証されれば、虚偽表示製品のそれぞれについて、(すなわち、虚偽表示を附す決定毎についてではなく、虚偽表示がなされた各製品毎に)、500ドルの罰金が科され、その半分が原告の取り分と成り得るとの判決があった(Forest Group, Inc. v. Bon Tool Co. CAFC December, 2009)。
①Solo cup事件
 SoloCup社は使い捨てカップの特許権を所有していた。製造販売しているカップにその特許番号を刻印していた。
 2000年6月、S社は、存続期間満了の特許番号の表示について社外弁護士に助言を求めた。弁護士との協議後、費用および業務中断による支障を考慮して、S社は、押型の切替えが必要となるまで期間満了の特許番号は表示したままとするが、切替え時には期間満了の特許表示は外すという方針を決めた。 2004年に社内弁護士からパッケージに使用する特許表示の一部に、条件付きの文言「本製品はひとつまたは複数の米国または外国の出願中または発行済みの特許でカバーされているかもしれません。詳細についてはwww.solocup.comをご覧下さい。」を付すような助言を受け、S社はその助言に従い、パッケージの記載をそのように変更した。
 2007年、Pequignotが、S社に対して、公衆を騙す意図をもってコップの蓋およびパッケージに虚偽表示を行い、第292条に違反したとして、地裁に提訴した。およそ220億個の物品の虚偽表示が行われているとして、各物品につき500ドルの罰金を求めた。このうち2分の1(約5.4兆ドル)は連邦政府の収入となり、残り2分の1は同氏が得るとの訴えた。 2008年3月、連邦地裁は、「期間満了の特許番号の表示も、『カバーされているかもしれません。』という文言の表示も、法律上虚偽表示を構成し得る」として、S社の棄却申立てを退けた(判決速報6頁)。
 2009年8月、S社は公衆を騙す意図の推定について反証をなしたとして、S社勝訴の略式判決を行った。 これに対しPequignotはCAFCに控訴した。

(CAFCの判示事項)
 CAFCは連邦地裁の略式判決を支持した。 〔理由〕 合理的な陪審であれば、特許表示における期間満了の特許番号の表記や条件付きの文言の使用をもって、S社が公衆を騙すつもりであったと判断し得る証拠とはならないと示した。その根拠として、
 a) S社は、弁護士に助言を求め、それに従っていること、および
 b) 特許の失効後直ちにコップの蓋の特許表示を変更するというのは非常に費用がかかり、業務中断も生じ得ること。 を挙げている。
a. 「期間満了特許によってかつては保護されていた」製品と「特許の保護対象となっていない[なったことのない]」製品との対比: どちらも、292条における「非特許製品unpatented article」であると判示した。
b. 虚偽の表示をしたとされる者が「公衆が欺かれるという結果を故意に望んでいなかったことを立証できる」ならば、単に表示が虚偽であることを知っていたという理由のみでは、公衆を欺く目的であったことを立証するに不十分であると判示した。具体的には、虚偽の表示をした製品は公衆を欺く意図があったとする推定を引き起こすが、この推定はこのような意図がなかったことを示す優位な証拠により立証した場合に反証可能である、との判示した。
c. 公衆を騙そうとしたのではないという被告の善意を示すため弁護士の助言に依拠することは容認される。また、会社が費用および業務中断の問題を勘案しつつ製品への表示を適切かつ正確に行おうとしたことを示す事実がある。被告は、証拠の優越により、公衆を騙す意図はなかったことを証明すれば足りる。
d. 条件付きの特許表示の文言、例えば、「本製品はひとつまたは複数の米国または外国の出願中または発行済みの特許でカバーされているかもしれません。」という文言が、公衆を騙すことを目的として作成され得るものか「非常に疑問である」と述べ、特許表示における条件付きの文言は、通常虚偽表示を構成しないことを示唆した。

②Brooks Brothers事件 BrooksBrothers社はボータイに関する二つの特許権を所有していたが、1954年及び1955年にそれぞれ存続期間が満了した。 B社は期間満了の特許番号をボータイに付け続けた。
 StaufferがB社を特許虚偽表示で提訴した。B社はStaufferが、損害が原告(公衆)に発生していることおよび損害をこの訴訟で補うことができることの立証がなされていないという理由で当事者適格が無いと反論した。
 連邦地裁は、公衆に損害が発生しているとの立証が不十分という理由で当事者適格を否定した。StaufferがCAFCに控訴した。
(CAFCの判示事項)  292条には「何人も訴えることができる」と規定されている。当事者適格を認めなかった最高裁判例は、政府に対する訴訟であった。本事件は政府を代理しての訴訟であるから、最高裁判例の適用はない。虚偽表示は議会にとっての損害、すなわち公衆の損害であるとし、当事者適格を認めた。事実審を行わせるために地裁に差し戻した。

  * 287条 特許表示と損害賠償請求
 特許表示がなされていない場合、侵害者に対してその侵害の事実が通知され、その後も侵害が継続されたことを立証しない限り、特許侵害に係る損害の賠償を求めることができない旨規定しています。また、損害賠償は、そのような通知の後に生じた侵害行為についてのみ請求することができる。
*Marking & Notice Amsted Industries v. Buckeye Steel Castings Co.
 法287条は特許製品に特許表示をしなければ、警告前の侵害行為に対して損害賠償を請求できないと規定している。(事実) 本ケースで原告は1986年に同業他社に対して「原告は269特許を保持しており、侵害する場合は法的手段に訴える」との手紙を送付した。 次いで1989年に被告に対して「被告は269特許を侵害している」との手紙を送付した。(判示事項) 警告には、侵害製品を特定し、具体的措置を請求したことを、その行為者に直接的に伝えることが必要である。侵害者が自己の行為が侵害行為であることを知っていたかどうかは関係ない。 1986年の手紙は単なる通知で、警告にあたらない。従って損害賠償は1989年の手紙以降についてのみ認める。

 *製造等していない特許権者と特許表示
  Wine Ry. Appliance Co. v. Enterprise Ry. Equipment Co., 297US387(1936)
(背景)旧特許法(1861年法)では、製造等をしていない特許権者は、損害賠償を請求するために、公衆に特許品であることを知らせる義務は無かった。新法(1870年法)では、製造等をしていつといないとに係わらず公衆に知らせる義務があるような規定になった。
(判決) 製造等をしていない特許権者は、公衆に特許品であることを知らせる義務はない。新法は旧法の趣旨を変更するものではない。
 従って、製造等をしていない特許権者は、侵害開始時から損害賠償を請求できる。

 *方法特許の特許表示
Hanson v. Alpine Valley Co., Inc. 219USPQ679
(事実)H社は方法クレームと装置(スノーマシン)クレームの特許を所有し、訴外のS社にライセンスしていた。 A社はH社にスノーマシン3台を製造させ、それを使用していた。 H社はA社が方法特許(装置特許については不問)を侵害しているとして提訴した。
(判決) H社はS社が装置にマーキングしていることを立証できなかったが、本件は方法特許にかかるものであるか、287条は適用されず、マーキングは不要である。註)装置特許の侵害をなぜ訴えなかったか? 判決からはわからないが、1)装置特許の侵害が無かったか?、2)損害賠償額が少なかったか?などが考えられる。
Devices for Medicine Inc. v. Boehl 3 USPQ2d 1288
(事実)D社は医療用イントロデューサーとそれを使用する方法とをクレームした特許権についての専用実施権を有していた。D社はB社が該特許を侵害しているとして提訴した。 D社は特許表示をしていなかった。 B社はD社との訴訟の争点を損害賠償のみに絞るために、特許侵害及び特許無効について争わないというStipulationをした。
(争点)
 1)Stipulationによって特許の存在を知ったB社に、D社はNoticeをする必要があるか?
 2)方法クレームを含む特許において278条のNoticeは必要か?
(判決)
 1)287条は「侵害者が侵害していることを通告された」という証明を要求している。特許の存在を知っていたことだけでは足りない。特許侵害の存在を知っていることが必要である。
 2)装置クレームと方法クレームの特許権侵害は、方法クレームのみの特許権侵害と事情が異なる。通告が必要である。
 註)HansonとDevicesは、方法クレームと装置クレームとを有し、特許権としては同じシュティエーションであるが、通告についての判断が異なる。 この2ケースから、方法クレームのみについての特許侵害を訴えることによって、通告の立証を要しないで済むという脱法行為が考えられる。しかし、それは許されないであろう。 おそらく、Hansonでは装置クレームの侵害がなかったから、方法クレームだけで判断したのではないか、一方、Devicesでは装置クレームの侵害があったから、両方のクレームで判断したのではないかということが考えられる。

*製法クレームとマ-キング
American Medical Systems Inc. v. Medical Engineering Corp. 28USPQ2d1321
(事実) 1986年7月1日  765特許発行(装置クレームとその製造方法クレーム) 1986年7月下  M社、765特許の存在を知る 1986年8月   A社はM社に765特許の存在を知らせる。 1986年10月15日 A社は特許表示した装置を出荷(但し、特許表示のない装置も並行して出荷していた。) 1987年10月28日 A社はM社を提訴。
(判決) 1)損害賠償の起算日 287条では、製品への特許表示又は侵害者への通知のいずれか早い時以前の侵害行為による損害の回復はできない旨を、規定している。 特許非表示製品の出荷は、公衆に、特許権の存在を誤解させるものである。特許非表示製品の出荷を中止し、実質的にすべての製品に特許表示がなされた日を起算日とする。
2)方法特許の特許表示 方法特許に特許表示が不要なのは、特許表示が不可能だからである。
 装置と方法の特許権に対する侵害では、特許表示は必要である。註)方法クレームには2種ある。装置の製造方法(American)と、装置の使用方法(Devices)とでは、異なる扱いがされるべきと思うが、判例では明確になっていない。

*特許表示と損害賠償(287(a))、意匠権侵害の利得返還(289)
Nike, Inc. v. Wal-Mart Stores, Inc. and Hawe Yue, Inc. (Decided Mar. 12, 1998 CAFC)
(事実) 1993年10月13日 N社は"Air Mada Mid"というシューズの意匠出願をした。 1994年4月   意匠出願に係るシューズを売りだした。 1994年07月19日 意匠権が成立した。その時点でシューズは市場に十分行き渡り小売店にストックされていた。 N社は権利発行後、マーキングの手続を行なった。 1995年04月   H社はN社シューズの模倣品を輸入し、 1995年05月   W社が該模造品を小売販売した。 1996年01月18日 N社はW社及びH社を意匠権侵害でヴァージニア東部地裁に提訴した。 地裁は、W社及びH社はN社の意匠権を侵害していると判決し、289条に従ってN社に侵害者の利得"Profit"の返還を命じた。287(a)条は適用しなかった。 W社及びH社は、マーキングと賠償額について控訴した。
(背景) 287(a)条はマーキング(特許表示)に関する規定である。この規定は「特許権者は特許製品に特許表示を付すことができる。そして、特許表示などによるNoticeが無い場合はNotice以前の損害"Damage"が補償されない」旨を述べている。 一方、289条は意匠権侵害における賠償に関する規定である。この規定では「意匠権に係る意匠と同一又は模倣物を正当な権限なく販売等した者は、総利得"Profit"の範囲で権利者に返還する責任がある」旨を述べている。 "Damage"と"Profit"は長年区別されて扱われてきた。例えば、Braun Inc. v. Dynamics Corp. of America,975 F.2d 815(1992)では289条の利得の返還に284条の3倍損害賠償の規定を適用しなかった。本ケースでも、地裁は、利得と損害を区別し、損害に適用されるマーキングの規定を289条の利得の返還には適用しなかった。
(CAFC判示事項)
 マーキングの規定と賠償の規定とは並行して別々に発展してきた。マーキングの規定は、(1)罪の無い侵害を防ぐ、(2)権利者に特許表示を義務づける、(3)第三者が特許品か否かの判断するのを助けることを目的としている。 特許表示が無い場合、旧法では罰金を科せられたが、現在は"Damage"の賠償請求ができないと変更されている。 Damageの賠償においては、しばしば、侵害者の利得を権利者の損害として賠償させるケースがあった。一方、賠償の規定においては、意匠権侵害による損害の立証が困難であったことから、意匠権侵害者の利得を意匠権者に返還させるという289条を制定し、意匠権者の権利を強化した。 マーキングの規定におけるDamageの意味は、法制定の歴史等から、文字どおりの損害だけでなく、侵害者の利得によって計算される賠償も含むと解される。 従って、意匠権侵害における利得返還にマーキングの規定を適用できる。

|

« January 2011 | Main | June 2011 »