November 27, 2005

「正露丸」

先週、ラッパのマークの「正露丸」が ひょうたんマークの「正露丸」を不正競争防止法で訴えたらしい。

両者ともに、黄色の箱で、縦書きで「正露丸」、その文字の上に、マークが着いている。

「正露丸」は一般名称になっているから誰が使っても文句は言われない。
黄色の箱自体は顕著性がないから争そえないでしょう。たぶん。他社品は皆黄色の箱だから、

となると、マークの類似性が主な争点になるんだろうか?

「正露丸」という名前の整腸剤は、多数あるみたいで、マークがそれぞれ違う。

・テレビでおなじみの『らっぱ』マーク
・菱形の中に明の一字のマーク
・鳩を図案化したようなマーク
・白鳩が羽ばたいているマーク
・白熊のマーク
・王冠マーク
・船の錨マーク
・小槌のマーク
・鼓のマーク
・孔雀のマーク
・ハートのマーク
・△マーク
・逆△マーク
・十字のマーク
・Kマーク
 などなど、切りが無い。詳しくは、http://www.edo.net/machida/kateiyaku/seirogan2.html

ちなみに昭和35(行ナ)32 の商標権「正露丸」の登録無効審決取消訴訟の判決には、次のような記載があった。

(「征露丸」名称の起源)
 明治三七、八年の日露戦争以前、当時の陸軍軍医学校において、戦場で発生する腸性の伝染疾患、とくに腸チブス、赤痢等の予防薬として、クレオソート製薬剤の創製の研究が行なわれ、同戦争の勃発に伴い、軍の方針により、これを丸薬として出征中の全将兵に右疾患予防のため連日服用させることとし、明治三七年三月中ごろから陸軍衛生材料厰で製剤して配布されたのが、この種丸薬製造の始まりである。そして、軍当局は、この丸薬が特殊な薬臭のため服用され難いことを考慮して、服用を奨励するため、これに戦争名にちなみ「征露丸」と命名したのが、その名称の起源である。

(「征露丸」名称の普及)
 同戦争後、帰還将兵により、戦陣薬「征露丸」の名称と、その薬効の顕著であることが喧伝され、かつ、右薬剤の製造販売と名称の使用が民間の製薬業者一般に開放された結果、右名称を踏襲使用して同薬剤の製造販売をする業者が、明治、大正の時代を通じ数十名に達し、どの業者の製品も「征露丸」の名称で販売されていた。

(「征露丸」商標の登録無効の審決、「正露丸」および「何々正露丸」の名称の出現)
 鳥栖製剤合資会社は、いち早く明治三八年九月に指定商品丸薬につき「征露丸」の文字からなる商標の登録を得た(登録第二四、二〇八号)ところ、同業者の【A】は、大正一一年ごろ同商標権の持分を譲り受けて共有者となるや、「征露丸」商標使用の他の業者に対し商標権侵害を理由に禁圧手段に出たが、大正一三年八月同業者である日本製薬株式会社ほか二名より、同商標につき登録無効の審判が請求された結果、大正一五年六月二八日大審院において、同商標は日露間の平和回復後は、その語意にてらし国際間の通義に反し秩序を紊るものであるとの理由で、これを無効とした抗告審判の審決が是認され、同商標権は遡つて効力を失つた。
 その後、業者の中には、右判決の趣旨を汲んで「征露丸」の名称の使用をやめ「戦友丸」「平和記念丸」などの別名に変えたものもあつたが、その場合でも、包装外箱等に「旧名称征露丸」、「通称征露丸」などの表示を添え、従来の征露丸と同一のものであることを明らかにするのが通例であり、また、監督官庁の行政指導により、「セイロ」「セイロ丸」等の仮名文字に変えたり、「征」の字を、これと呼称をおなじくし外観も近似する「正」の字で置きかえ「正露丸」の名称を用いるものが圧倒的に増加するにいたつた。これに伴い、業者の中には、自己の商品を特徴づけるため、「何々正露丸」のごとく「正露丸」「正露」または「セイロ」の文字の上に、業者名その他の固有名詞からなる文字、または文字と図形の結合からなる社標など、固有の標識を付記あるいは結合させ、取引面においても、この固有標識または業者の名称あるいは包装外箱の着色等によつて、他の業者の同種商品と区別し取引されてきたのである。・・(略)

やがて昭和一八年第二次世界大戦による企業の合同が実施せられるに及んで、群小の本件医薬品業者は、原料の不足とあいまつて、比較的少数の企業体に統合されて存続することになつた。

(第二次世界大戦後の「正露丸」等の業者の乱立)
 第二次大戦中の軍隊においても、本件医薬品は戦陣薬として用いられ、「せいろがん」と呼ばれて将兵の間になじみ深いものであつたが、戦後の昭和二二年ごろから、統制の解除に伴い、戦前同様に大阪、奈良、滋賀、富山、香川、岡山、愛知、三重、東京の各都府県に、「正露丸」「征露丸」「せいろ丸」「セイロ丸」またはこれらの文字に業者名その他の標識を付記した「何々正露丸」の名称を用いた本件医薬品の製造販売業者が続出し、その数は五〇を下らず、これらの業者の中には全国的に行商ないし配置販売を行なうものもあり、昭和二四年から昭和二九年ごろを頂点として「せいろがん」と呼ばれる本件医薬品は、家庭薬として全国に浸透した。そして、需要者が「せいろがん」と呼んでこれを購入しようとする場合、売薬業者は、いくつかの業者の製造販売にかかる本件医薬品のうち、任意のものを客に売り渡すのを通常とし、特定の業者の商品を売買しようとするときは、とくに「何々せいろがん」と呼び、または包装外箱の着色などの特徴を示さなければ、その特定が不可能の状態であつた。そのころ、所管の厚生省薬務局は、業者からの「征露丸」の製造許可申請に対し、その方名を「正露丸」に改めるよう行政指導をしたので、「征」の字を用いる業者はしだいに減少し、一般の需要者も、日露戦争以来用いられた「征露丸」の名が、第二次大戦後の平和回復とともに、「征」の字の使用が望ましくないために「正」の字に置き換えられ、または仮名書きとされたものであることや、表示する文字は変わつても本件医薬品の実体に変わりはないことをよく認識していたのであつて、その意味で「正露丸」「せいろ丸」「セイロ丸」の語は、「征露丸」と同一物を指す語として一般に認識されるに到った。

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July 23, 2005

05年7月の商標に関する三つの最高裁判決

商標権に関する、最高裁判決が3件あったので、ご紹介します。

1.商標登録無効審判の除斥期間
(判例 平成17年07月11日 第二小法廷判決 平成15年(行ヒ)第353号 審決取消請求事件)

要旨:商標法4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,当該商標登録が同号に違反する旨の記載があることをもって足りる。

(背景) 除斥期間経過直前に審判請求して、請求書には、根拠条文を記載し、理由を追って補充するとのみ記載していたところ、除斥期間経過後、特許庁の方式指令に従って、理由補充を行った。上告人は理由補充が除斥期間経過後に提出されたので、無効理由はないと主張していた。

実務上の指針:審判請求書には、無効理由の可能性のある根拠条文は、すべて列挙すべきである。

2.商標登録出願の分割出願と補正

(判例 平成17年07月14日 第一小法廷判決 平成16年(行ヒ)第4号 審決取消請求事件)

要旨:標登録出願についての拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,分割出願がされ,もとの商標登録出願について指定商品等を削除する補正がされたときには,その

補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはない。

 商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決(以下「拒絶審決」という。)に対する訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について補正がされたときには,その補正は,商標法68条の40第1項が規定する補正ではないから,同項によってその効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,商標法には,そのほかに補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずる旨の規定はない。そして,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合にも,補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずるとすると,商標法68条の40第1項が,事件が審査,登録異議の申立てについての審理,審判又は再審に係属している場合以外には補正を認めず,補正ができる時期を制限している趣旨に反することになる(最高裁昭和56年(行ツ)第99号同59年10月23日第三小法廷判決・民集38巻10号1145頁参照)。

 拒絶審決を受けた商標登録出願人は,審決において拒絶理由があるとされた指定商品等以外の指定商品等について,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願をすれば,その商標登録出願は,もとの商標登録出願の時にしたものとみなされることになり,出願した指定商品等の一部について拒絶理由があるために全体が拒絶されるという不利益を免れることができる。したがって,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について願書から指定商品等を削除する補正がされたときに,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることを認めなくとも,商標登録出願人の利益が害されることはなく,商標法10条の規定の趣旨に反することはない。

 以上によれば,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について願書から指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,審決が結果的に指定商品等に関する判断を誤ったことにはならないものというべきである。

(背景)審決取消訴訟係属中に、出願人は分割出願をして、同時に親出願を補正し、分割出願に係る指定商品等を削除した。東京高裁は、この補正により親出願の指定商品等は、出願時に遡って補正されたことになるので、審決は、その対象を誤って判断したことになり、違法であるとしていた。

実務上の指針:拒絶理由があるとされた指定商品等以外の指定商品等について、分割出願すべきである。

3.商標法4条1項8号  ~ 「自由学園」事件

(判例 平成17年07月22日 第二小法廷判決 平成16年(行ヒ)第343号 審決取消請求事件)

要旨:登録商標「国際自由学園」が商標法4条1項8号所定の他人の名称の著名な略称を含む商標に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

 商標法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。

 そうすると,人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。

実務上の指針:商標法4条1項8号は、商標の指定商品又は指定役務の需要者のみだけでなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断すべきである。

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