January 24, 2012

国際貿易委員会の国際裁判管轄

TianRui Group Co. Ltd vs ITC (CAFC判決 Oct. 11, 2011)

判事:Bryson, Schall and Moore

判決文 Bryson 反対意見 Moore

(概要)

 Amsted社が、TianRui社による鉄道用車輪の輸入をトレードシークレットの侵害に基づき差し止めることを求め、ITCに提訴した。ITCはその訴えを認めた。TianRuiはこれに対してCAFCに控訴した。CAFCITCの判断を支持した。

(背景)

 Amsted社は鉄道用車輪の米国製造会社である。該社は2つの秘密の製造プロセス(ABCプロセスとGriffinプロセス)を所有していた。当初、A社はABCプロセスで車輪を製造していたが、現在はGriffinプロセスですべての車輪を製造している。A社は中国のDatong社などにABCプロセスをライセンスしている。中国Datong社の従業員の何人かをA社の工場で研修させてABCプロセスを習わせた。

 TianRui社は鉄道用車輪の中国製造会社である。2005年にA社とのライセンス交渉を行ったが妥結に至らなかった。

 ABCプロセスの研修を受けたうちの9人が、Datong社からTianRui社に転職した。この転職の前にDatong社は9人のうち8人と秘密保持契約を締結した。

 その後、TianRui社は米国に鉄道用車輪を輸入した。Amsted社はDatong社から転職した従業員がABCプロセスのトレードシークレットを開示し、TianRui社がそれを用いた鉄道用車輪を米国に輸入したとしてITCに提訴した。

(争点)

 前記のTianRui社の行為が

 ①「不公正な競業方法および物品の米国への輸入に関する不公正な行為」に該当するのか?  (中国でトレードシークレットが開示された。)

 ②「物品の輸入が国内産業を実質的に害しまたは破壊する恐れ」ある行為に該当するか?

  (米国ではABCプロセスが行われていない。)

(CAFC)

 争点①

 ・州法が適用されるのか、連邦法が適用されるのか?⇒ 連邦法が適用される。

〔理由〕 域外の行為に関する争点であるから連邦法が適用される。

 ・中国におけるトレードシークレットの使用を米国で裁けるのか? ⇒ 裁ける

(理由)

 1.関税法337条は、不公正競業および「物品の輸入」に関する不公正行為を制限する規定である。 国内だけの問題を扱うということを意味していない。

 2.委員会は外国での行為そのものを裁いているのではなく、輸入品によって米国内で引きおこされる弊害のみを裁いているのである。

 3.法制定の経緯によれば、先ず「不公正な競合方法」の禁止が規定され、その後、より広く柔軟な事象を包含する意図で法改正された。

 

 ・中国における行為は中国法に基づき裁くべきなのではないか? ⇒ 輸入品に関する弊害を裁いているのであるから、中国法を適用する必要はない。

 争点②

 法定権利(特許権など)の場合には、法定権利によって保護されるべき物品が存在し、または法定権利によって保護されるべきプロセスが実施されていることが要求される。

 一方、不公正行為は非法定権利である。

 不公正行為の場合は、国内産業が存在することを立証するだけで足りる。すなわち国内産業を破壊するまたは実質的に害する恐れを示すことが要求されるだけである。

 以上のことから、ITCの決定を支持する。

(参考)

 日本 民事訴訟法 国際裁判管轄 第3条の3~第3条の10

|

September 21, 2011

侵害誘引&寄与侵害(Intent)

Global-Tech Appliance, Inc. v. SEB S.A. 2008-1511 -- On May 31, 2011最高裁判決:

(背景)

 権利者SEB社(フランスの調理器具会社)

 被告Global社の親会社(Pentalpha:香港)がSEB社製のFryer(揚げ鍋)を購入し、外観以外はすべてSEB社製品をコピーした製品を製造した。該コピー品を米国Sunbeam社に販売する契約した。その後、Pentalpha社は米国特許侵害の有無を米国弁護士に分析依頼した。この際に、コピー品であることを告げなかった。

 米国弁護士の分析においては、SEB社の当該特許権は対象外となった。その結果、非侵害の鑑定書が提示された。

 Sunbeam社は米国でコピー品を販売したことに対してSEB社が特許侵害で訴えた。SEB社とSunbeam社間は和解金で決着した。

 その後、Pentalpha社はコピー品の改変品を製造し、再び他の米国会社に販売した。この改変品も特許侵害で差止命令が下された。

 SEB社はPentalphaに対して侵害誘引(271(b))を行ったとして訴えた。

 CAFCは、Pentalpha社は、deliberate indifference(故意あるいは計画的な無関心)の基準によって意図の有無を判断した。その結果、侵害誘引を認定した。

 Pentalpha社はこれについて最高裁に上訴した。

(侵害誘引と寄与侵害)

 米国特許法には大きく3つの侵害行為を挙げている。

  ①直接侵害271(a)

  ②侵害誘引271(b)

  ③寄与侵害271(c)

(過去の判例)

 271(b)271(c)とは、特許製品の製造、使用、販売の申出または販売をしていないが、被告の行為が十分過失があり侵害者として責任を負うべき場合に適用される。

 271(c)は、販売者が特許製品の構成部分を販売していたとき、構成部分自体は特許クレームの範囲に含まれないが、特許製品以外には用途がない場合に適用される。

 271(b)271(c)に該当する行為以外のすべての行為に適用される。

 271(b)の侵害となるには、被告は侵害となる行為を引き起こす意図(intentを持っていたことを証明されなければならない。

 271(c)の侵害となるには、被告が、1)構成部分は特定の用途のために製造されていること、2)その構成部分をその特定の用途にしようすることが特許侵害となることを知っていることが立証されなかればならない。

 また、寄与侵害となるには、被告の構成部分が特許発明の構成部分にまさしく適していなければならない。販売される構成部分が特許を侵害することにも使用され、また他の合法な使用にも適合する場合には、その構成部分の販売者を寄与侵害とするには不十分である。

(最高裁判決)

争点: 271(b)の意図とは?

 特許侵害を誘引することを意識せずに単に他者の直接侵害を積極的に誘引したことを示すだけで十分か? ×

 誘引した他者の行動が特許侵害となる危険性を実際に認識していたことを示すことが必要か? ○

 ただし、

 最高裁は271(c)271(b)とを同じ基準で判断すべきと判示し、271(c)の意図にwillful blindness(故意に目を瞑る)の基準を採用した。

 willful blindnessの基準:

 違法行為と疑われる行為が高い確率で存在することに気付いていながら、そのような違法行為を認識することを故意に避けること =違法行為が存在しないと現実に信じていない限り、実際に違法行為を認識している状態と同等視すること。

 他者の違法行為を実際に認識していたことを立証できない場合でも、willful blindnessを示すことによって、違法行為を実際に認識していたと示唆できる。

 

 willful blindnessの立証には、ある事実が高い確率で存在することを被告が主観的に信じていたこと、被告がその事実を知ることを避けるために計画的な行動をとっていたこと、が要求される。

 この立証によれば、「未必の故意recklessness(違法行為が存在するという重大かつ正当化できないリスクを単に認識していた場合)」、「過失negligence(違法行為が存在するという重大かつ正当化できないリスクが存在することを気付くべきであったが、気付かなかった場合)」を除外できる。

 

 deliberate indifference(故意あるいは計画的な無関心)の基準による場合には、誘引した他者の行為が特許侵害になるという危険性が単に認識されているだけで、侵害誘引と認定されてしまう可能性がある。また、誘引した他者の行為が持つ特許侵害としての性質について認識することを避けるために積極的な努力を払っていない場合でも、侵害誘引と認定されてしまう可能性がある。

 判決:willful blindnessの基準に基づいて判断し、侵害誘引を認定した。

(日本の間接侵害)

 101条1項&4項 専用品「にのみ用いる」

     2項&5項 発明による課題の解決に不可欠なもの

           発明の実施に用いられることを知っていた

   直接侵害を要しないとする説と、要するとする説とがある。

(ドイツの間接侵害)

 10条1項 発明の使用に適し

       その使用に当てられることを知っている

          または周囲の状況から明らかであるとき

       発明の本質的部分を

  直接侵害の恐れ、実際の直接侵害は不要

  以上

|

July 20, 2011

不公正行為の認定要件(MaterialityとIntent to deceive)

Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. 2008-1511 -- On May 25, 2011 CAFC en banc判決:

 判事Rader, Newman, Lourie, Bryson, Gajarsa, Linn, DYK, Prost, Moore, O'Malley and Reyna
 
多数意見:Rader, Newman, Lourie, Linn, Moore, Reyna
 
一部賛成一部反対:O'Malley
 
少数派意見:Bryson, Gajarsa, DYK, and Prost

(大法廷における争点)

1)不公正行為の判断で、materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは変更すべきかまたは置き換えるべきか?
2)もしそうなら、どのように変更すべきか、どのようなものと置き換えるべきか?もしそうならば、フロードまたはunclean handの適正な基準は何か?
3)Materialityの適正な基準は何か? 特許庁の規則はどのような役割を果たすべきか? materialityであるとするために、追及されている不適切行為ではないが、1以上のクレームに特許付与しなかったということが要求されるか?
4)Materialityから意図があったと判断するのに適正な状況とは何か?
5)materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは捨て去るべきか?
6)他の連邦機関におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、コモンローに基づくmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、それらは、特許におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準を明らかにする。

(大法廷の多数派意見)

①アンクリーンハンド論(Doctrine of unclean hand)

     とんでもない不品行(Egregious misconduct)

過去の判例

 Keystone事件

出願時に先使用者の存在を知っていたが、その情報を提出しなかった。先使用者に賄賂を支払って、虚偽の宣誓供述書(affidavit)にサインさせた。⇒先使用者との贈収賄取引が判明し、unclean handとされた。

 Hazel-Atlas事件

特許弁護士が当該技術分野において本発明が先進的であることを示す文書を作成した。Clarke氏がその文章について彼自身が所持し開示した文書であるとしてサインした。地裁一審は非侵害、控訴時にClarke氏の文書を証拠として主張、地裁二審で侵害。和解によって裁判は終了したが、その後に、特許権者はClark氏に多額の支払いをしたことが明るみに出た。判決の無効を地裁に訴えた。支払いを隠匿していたことはunclean handである。

 Precision事件

抵触審査において、相手方が、着想、開示、図示、実施などの日付を虚偽に記載した供述書を提出した。抵触審査手続で、その虚偽日付を証言した。虚偽証言の事実を知りながら、和解に持ち込み、相手方から特許権を譲り受けた。その特許権に基づいて第三者を訴えた。

Intent to deceive Materiality

(混乱期)

Should have known Standard (Orthopedic 1983)

 知っていたまたは知るべきであった文献を開示しなかったことは特許庁を誤導する意図の存在を示す証拠として十分である。

Reasonable Examiners Standard 1977年版PTO Rule

 通常の審査官が特許するか否かを判断するのに重要と考えるもの=Material

Am. Hoist 1984

 Materialityが高い場合は意図が低くても不公正行為になる(Sliding Scale:意図と重要性とのバランス)

(指針)

 ・Kingsdown 1988

 その後、不公正行為主張によって権利不行使にするというのが、訴訟戦略において常套手段化。

 そこで、今回、大法廷で見直し。

③欺く意図について

  重要性だけから欺く意図を認定することはできない。

  重要性の解析とは、独立に欺く意図の評価をしなければならない。

  証拠から導きだせる、理に適った一つの推理があれば、欺く意図があったとすることはできる。

  二つ以上の推理がある場合には、欺く意図があったとはしない。

  被疑侵害者が、先に、欺く意図を明確に且つ説得力ある証拠で立証しなかったら、権利者は、善意行為であったとの反証をする必要がない。(立証責任の分担)

  重要文献不提出だけで欺く意図があったとしない。

④重要性について

  But-for Materiality Standard  もし、この非開示文献を特許庁が知っていたら特許発行しなかったであろう場合にはMaterialityがあったとする。

  裁判所において、特許無効となる文献は、Materialityがある。特許無効は、明確に且つ説得力ある証拠(Clear and Convincing Evidence)を基準としている。これに対して不公正行為におけるMaterialityは特許庁の証拠基準(preponderance of the evidence)で特許発行しないとなるものである。

  unclean hand またはegregious misconduct materiality がある。

  悪意ある行為によって特許になると信じていなかった場合には、PTOを欺こうとはしていなかった傾向がある。

  裁判所は、PTOのMaterialityの基準を適用しない。PTOの規則56Fraud Standard から Reasonable Examiner Standard へと変遷している。

  他の法域における基準でもあるBut-for test for materiality との整合性がある。

(一部賛成一部反対)

 Sliding Scaleを適用してはならない。欺く意図の立証は間接的および状況証拠から意図を推理することができる。(これらについては多数派に賛成)

「証拠から導かれる単一の理にかなった推理」を判断基準とすることについては反対。

 

(少数派意見)

 欺く意図は、怠慢(negligence)だけでは不十分。、

  Sliding Scaleを適用してはならない。MaterialityIntentとは独立に立証要。

  materialityの判断基準:PTO規則56(1992年版)

  ・prima facieケースを生じさせる文献

  ・出願人の立場と矛盾するまたは否定する文献

以上

|

June 21, 2011

判決軽視判断の基準

TiVo, Inc. v. EchoStar Corp., et al.事件、No. 2009-1374 (2011 4 20 日連邦巡回控訴裁) についての連邦巡回控訴裁の大法廷判決

(概要)Tivo社はUSP6233389を所持。該特許は、DVRのリプレー機能に関する発明を請求している。

 EchoStar社は類似DVR製品Aを製造および販売していたところ、Tivo社が特許権侵害で提訴、差止判決が確定した。

 EchoStar社は製品Aを設計変更して製品Bを開発した。該製品Bについて特許権侵害はないとの専門家鑑定も得、万全を期して製造および販売を開始した。

 Tivo社は確定判決を軽視するものである(法廷侮辱罪)として、EchoStar社を訴えた。地裁はKSMテストを行い。Colorable Differenceを超えていないということで、確定判決軽視(法廷侮辱罪)を認定し、損害賠償に加え制裁金を科した。EchoStar社はKSMテストは判決軽視判断の基準として不適切であるとしてCAFCenBancを求めた。CAFCenBancKSMテストに代わる新たな基準を示し、地裁判決を破棄した。

(USP389のクレーム31)

A process for the simultaneous storage and play  back of multimedia data, comprising the steps of:

[1] providing a physical data source, wherein said physical data source accepts broadcast data from an input device, parses video and audio data from said broadcast data, and temporarily stores said video and audio data;

[2] providing a source object, wherein said source object extracts video and audio data from said physical data source;

[3] providing a transform object, wherein said transform object stores and retrieves data streams onto a storage device;

[4] wherein said source object obtains a buffer from said transform object, said source object converts video data into data streams and fills said buffer with said streams;

[5] wherein said source object is automati-cally flow controlled by said transform ob-ject;

[6] providing a sink object, wherein said sink object obtains data stream buffers from said transform object and outputs said streams to a video and audio decoder;

[7] wherein said decoder converts said streams into display signals and sends said signals to a display;

[8] wherein said sink object is automati-cally flow controlled by said transform ob-ject;

[9] providing a control object, wherein said control object receives commands from a user, said commands control the flow of the broadcast data through the system; and

[10] wherein said control object sends flow command events to said source, transform, and sink objects.

(確定判決)

〔侵害差止命令〕

Each Defendant, its officers, agents, servants, employees, and attorneys, and those persons in active concert of participation with them who re-ceive actual notice hereof, are hereby restrained and enjoined, pursuant to 35 U.S.C. 283 and Fed. R. Civ. P. 65(d), from making, using, offering to sell, selling, or importing in the United States, the Infringing Products, either alone or in combina-tion with any other product and all other products that are only colorably different therefrom in the context of the Infringed Claims, whether indi-vidually or in combination with other products or as a part of another product, and from otherwise infringing or inducing others to infringe the In-fringed Claims of the ’389 patent.

〔廃棄命令〕

Defendants are hereby FURTHER ORDERED to, within thirty (30) days of the issuance of this order, disable the DVR functionality (i.e., disable all storage to and playback from a hard disk drive of television data) in all but 192,708 units of the Infringing Products that have been placed with an end user or subscriber. The DVR functionality, i.e., disable all storage to and playback from hard disk drive of television data) [sic] shall not be en-abled in any new placements of the Infringing Products.

(法廷侮辱罪に対する抗弁)

 善意Good Faith について:

  差止め命令に違反する意思が無かったということだけでは、命令を軽視していたということを覆すことはできない。

 また、DiligenceGood Faith efforts(侵害しない製品の開発、専門家鑑定などの努力)は、命令軽視に対する抗弁とはなりえない。

(差止命令の軽視について)

 KSMテストは、次の2段階で行われる。

 先ず、設計変更された製品によって侵害を判断するためのヒアリングを開くことが適切であるか否かを決定する。

 ヒアリングにおいて、侵害確定製品Aと被疑製品Bとを対比し、侵害に関する実質的な争点のようにして、両者間に"more than a colorable difference"があるか否かを裁判所は決めることができる。

 裁判所は、さらに侵害の決定をするためにTrialを開く必要がある。侮辱罪についての判断手続きをしなくてもよい。

 侮辱罪審理を開始するのが適切であるとの基準を満たしたときだけ、設計変更品が既決されたクレームを侵害し続けているのか否かの審理手続き(侮辱罪審理)を行える。

 KSMテストは、運用面で混乱をしている。侮辱罪ヒアリングを開始する要件なのか、侮辱罪認定の要件なのかを、混同している。

 そこで、"More than Colorable Differences" テストを提唱する。

 被疑侵害品の差し止めを求めるためには、次のことを立証しなければならない。

 1.被疑製品が既決侵害製品ともっともらしい相違を超えていないこと

 2.被疑製品が実際にクレームを侵害していること

 the party seeking to enforce the injunction must prove both that the newly accused product is not more than colorably different from the product found to infringe and that the newly accused product actually infringes.

 ふたつの製品の相違点を考慮するときには、既決において争点となったlimitationが、変更または除去されていた場合に、その変更または除去が有意であるか否かを判断する。古い要素と新たな要素の間の違いが有意である場合、新たな被疑製品についてはその全体が侵害認定を受けた製品と比較してもっともらしい相違を超えているとみなされ、これにより新たな被疑製品が実際に侵害しているかということについての審問は無意味となる。

 ふたつの製品の相違点を考慮するときには、関連技術を検討しなければならない。

 被疑製品に施された、変更または組合せが、公知技術から自明であるかどうかを決定する。非自明な変更または組合せである場合は、もっともらしい相違を超えているとしてもよい。この決定においては、専門家証言を参考に入れてもよい。

 裁判所が被疑製品が既決侵害製品ともっともらしい相違を超えていないと判断した場合には、被疑製品が実際にクレームを侵害しているかどうかを判断しなければならない。

 この判断は、limitation by limitation basisで構成を対比する。

 クレーム権利範囲は既決の解釈で判断する。

 特許権者は明白且つ説得力ある証拠基準で前記の1.と2.を立証しなければならない。

TIPS

 差止命令を受け取ったなら、直ちにそれを読み解き、曖昧な部分がある場合には、裁判所に対して、明確にするように申し立てることが重要である。曖昧さが残ったままにしておくと、この事件のような法廷侮辱罪を問われることがある。

 法廷侮辱罪の基準がより明確になった。Colorable differenceと侵害認定が渾然一体となっていたものが、分離され、被告側は、Colorable differenceの主張と非侵害の主張との2段階ができることが明確になった。

以上

|

February 18, 2011

特許表示と損害賠償請求

①Pequignot v. Solo cup Co. 2009-1547 CAFC June 10, 2010
②Stauffer v. Brooks Brothers, Inc. 2009-1428, -1430, -1453 CAFC August 31, 2010

事件の背景
35 U.S.C. 292 False marking. (a)Whoever, without the consent of the paten¬tee, marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with anything made, used, offered for sale, or sold by such person within the United States, or imported by the person into the United States, the name or any imitation of the name of the patentee, the patent number, or the words “patent,” “patentee,” or the like, with the intent of counterfeiting or imitating the mark of the patentee, or of deceiving the public and inducing them to believe that the thing was made, offered for sale, sold, or imported into the United States by or with the consent of the patentee; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any unpatented article the word “patent” or any word or number importing the same is patented, for the purpose of deceiving the public; or Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any article the words “patent applied for,” “patent pending,” or any word importing that an application for patent has been made, when no application for patent has been made, or if made, is not pending, for the purpose of deceiv¬ing the public — Shall be fined not more than $500 for every such offense. (b)Any person may sue for the penalty, in which event one-half shall go to the person suing and the other to the use of the United States.
 292条は、公衆を騙す意図をもって「特許されていない物品」(またはそれに関連するパッケージまたは広告宣伝)に特許表示(例えば「米国特許X、XXX、XXX」)を使用することを禁止している。
 公衆を騙す意図が立証されれば、虚偽表示製品のそれぞれについて、(すなわち、虚偽表示を附す決定毎についてではなく、虚偽表示がなされた各製品毎に)、500ドルの罰金が科され、その半分が原告の取り分と成り得るとの判決があった(Forest Group, Inc. v. Bon Tool Co. CAFC December, 2009)。
①Solo cup事件
 SoloCup社は使い捨てカップの特許権を所有していた。製造販売しているカップにその特許番号を刻印していた。
 2000年6月、S社は、存続期間満了の特許番号の表示について社外弁護士に助言を求めた。弁護士との協議後、費用および業務中断による支障を考慮して、S社は、押型の切替えが必要となるまで期間満了の特許番号は表示したままとするが、切替え時には期間満了の特許表示は外すという方針を決めた。 2004年に社内弁護士からパッケージに使用する特許表示の一部に、条件付きの文言「本製品はひとつまたは複数の米国または外国の出願中または発行済みの特許でカバーされているかもしれません。詳細についてはwww.solocup.comをご覧下さい。」を付すような助言を受け、S社はその助言に従い、パッケージの記載をそのように変更した。
 2007年、Pequignotが、S社に対して、公衆を騙す意図をもってコップの蓋およびパッケージに虚偽表示を行い、第292条に違反したとして、地裁に提訴した。およそ220億個の物品の虚偽表示が行われているとして、各物品につき500ドルの罰金を求めた。このうち2分の1(約5.4兆ドル)は連邦政府の収入となり、残り2分の1は同氏が得るとの訴えた。 2008年3月、連邦地裁は、「期間満了の特許番号の表示も、『カバーされているかもしれません。』という文言の表示も、法律上虚偽表示を構成し得る」として、S社の棄却申立てを退けた(判決速報6頁)。
 2009年8月、S社は公衆を騙す意図の推定について反証をなしたとして、S社勝訴の略式判決を行った。 これに対しPequignotはCAFCに控訴した。

(CAFCの判示事項)
 CAFCは連邦地裁の略式判決を支持した。 〔理由〕 合理的な陪審であれば、特許表示における期間満了の特許番号の表記や条件付きの文言の使用をもって、S社が公衆を騙すつもりであったと判断し得る証拠とはならないと示した。その根拠として、
 a) S社は、弁護士に助言を求め、それに従っていること、および
 b) 特許の失効後直ちにコップの蓋の特許表示を変更するというのは非常に費用がかかり、業務中断も生じ得ること。 を挙げている。
a. 「期間満了特許によってかつては保護されていた」製品と「特許の保護対象となっていない[なったことのない]」製品との対比: どちらも、292条における「非特許製品unpatented article」であると判示した。
b. 虚偽の表示をしたとされる者が「公衆が欺かれるという結果を故意に望んでいなかったことを立証できる」ならば、単に表示が虚偽であることを知っていたという理由のみでは、公衆を欺く目的であったことを立証するに不十分であると判示した。具体的には、虚偽の表示をした製品は公衆を欺く意図があったとする推定を引き起こすが、この推定はこのような意図がなかったことを示す優位な証拠により立証した場合に反証可能である、との判示した。
c. 公衆を騙そうとしたのではないという被告の善意を示すため弁護士の助言に依拠することは容認される。また、会社が費用および業務中断の問題を勘案しつつ製品への表示を適切かつ正確に行おうとしたことを示す事実がある。被告は、証拠の優越により、公衆を騙す意図はなかったことを証明すれば足りる。
d. 条件付きの特許表示の文言、例えば、「本製品はひとつまたは複数の米国または外国の出願中または発行済みの特許でカバーされているかもしれません。」という文言が、公衆を騙すことを目的として作成され得るものか「非常に疑問である」と述べ、特許表示における条件付きの文言は、通常虚偽表示を構成しないことを示唆した。

②Brooks Brothers事件 BrooksBrothers社はボータイに関する二つの特許権を所有していたが、1954年及び1955年にそれぞれ存続期間が満了した。 B社は期間満了の特許番号をボータイに付け続けた。
 StaufferがB社を特許虚偽表示で提訴した。B社はStaufferが、損害が原告(公衆)に発生していることおよび損害をこの訴訟で補うことができることの立証がなされていないという理由で当事者適格が無いと反論した。
 連邦地裁は、公衆に損害が発生しているとの立証が不十分という理由で当事者適格を否定した。StaufferがCAFCに控訴した。
(CAFCの判示事項)  292条には「何人も訴えることができる」と規定されている。当事者適格を認めなかった最高裁判例は、政府に対する訴訟であった。本事件は政府を代理しての訴訟であるから、最高裁判例の適用はない。虚偽表示は議会にとっての損害、すなわち公衆の損害であるとし、当事者適格を認めた。事実審を行わせるために地裁に差し戻した。

  * 287条 特許表示と損害賠償請求
 特許表示がなされていない場合、侵害者に対してその侵害の事実が通知され、その後も侵害が継続されたことを立証しない限り、特許侵害に係る損害の賠償を求めることができない旨規定しています。また、損害賠償は、そのような通知の後に生じた侵害行為についてのみ請求することができる。
*Marking & Notice Amsted Industries v. Buckeye Steel Castings Co.
 法287条は特許製品に特許表示をしなければ、警告前の侵害行為に対して損害賠償を請求できないと規定している。(事実) 本ケースで原告は1986年に同業他社に対して「原告は269特許を保持しており、侵害する場合は法的手段に訴える」との手紙を送付した。 次いで1989年に被告に対して「被告は269特許を侵害している」との手紙を送付した。(判示事項) 警告には、侵害製品を特定し、具体的措置を請求したことを、その行為者に直接的に伝えることが必要である。侵害者が自己の行為が侵害行為であることを知っていたかどうかは関係ない。 1986年の手紙は単なる通知で、警告にあたらない。従って損害賠償は1989年の手紙以降についてのみ認める。

 *製造等していない特許権者と特許表示
  Wine Ry. Appliance Co. v. Enterprise Ry. Equipment Co., 297US387(1936)
(背景)旧特許法(1861年法)では、製造等をしていない特許権者は、損害賠償を請求するために、公衆に特許品であることを知らせる義務は無かった。新法(1870年法)では、製造等をしていつといないとに係わらず公衆に知らせる義務があるような規定になった。
(判決) 製造等をしていない特許権者は、公衆に特許品であることを知らせる義務はない。新法は旧法の趣旨を変更するものではない。
 従って、製造等をしていない特許権者は、侵害開始時から損害賠償を請求できる。

 *方法特許の特許表示
Hanson v. Alpine Valley Co., Inc. 219USPQ679
(事実)H社は方法クレームと装置(スノーマシン)クレームの特許を所有し、訴外のS社にライセンスしていた。 A社はH社にスノーマシン3台を製造させ、それを使用していた。 H社はA社が方法特許(装置特許については不問)を侵害しているとして提訴した。
(判決) H社はS社が装置にマーキングしていることを立証できなかったが、本件は方法特許にかかるものであるか、287条は適用されず、マーキングは不要である。註)装置特許の侵害をなぜ訴えなかったか? 判決からはわからないが、1)装置特許の侵害が無かったか?、2)損害賠償額が少なかったか?などが考えられる。
Devices for Medicine Inc. v. Boehl 3 USPQ2d 1288
(事実)D社は医療用イントロデューサーとそれを使用する方法とをクレームした特許権についての専用実施権を有していた。D社はB社が該特許を侵害しているとして提訴した。 D社は特許表示をしていなかった。 B社はD社との訴訟の争点を損害賠償のみに絞るために、特許侵害及び特許無効について争わないというStipulationをした。
(争点)
 1)Stipulationによって特許の存在を知ったB社に、D社はNoticeをする必要があるか?
 2)方法クレームを含む特許において278条のNoticeは必要か?
(判決)
 1)287条は「侵害者が侵害していることを通告された」という証明を要求している。特許の存在を知っていたことだけでは足りない。特許侵害の存在を知っていることが必要である。
 2)装置クレームと方法クレームの特許権侵害は、方法クレームのみの特許権侵害と事情が異なる。通告が必要である。
 註)HansonとDevicesは、方法クレームと装置クレームとを有し、特許権としては同じシュティエーションであるが、通告についての判断が異なる。 この2ケースから、方法クレームのみについての特許侵害を訴えることによって、通告の立証を要しないで済むという脱法行為が考えられる。しかし、それは許されないであろう。 おそらく、Hansonでは装置クレームの侵害がなかったから、方法クレームだけで判断したのではないか、一方、Devicesでは装置クレームの侵害があったから、両方のクレームで判断したのではないかということが考えられる。

*製法クレームとマ-キング
American Medical Systems Inc. v. Medical Engineering Corp. 28USPQ2d1321
(事実) 1986年7月1日  765特許発行(装置クレームとその製造方法クレーム) 1986年7月下  M社、765特許の存在を知る 1986年8月   A社はM社に765特許の存在を知らせる。 1986年10月15日 A社は特許表示した装置を出荷(但し、特許表示のない装置も並行して出荷していた。) 1987年10月28日 A社はM社を提訴。
(判決) 1)損害賠償の起算日 287条では、製品への特許表示又は侵害者への通知のいずれか早い時以前の侵害行為による損害の回復はできない旨を、規定している。 特許非表示製品の出荷は、公衆に、特許権の存在を誤解させるものである。特許非表示製品の出荷を中止し、実質的にすべての製品に特許表示がなされた日を起算日とする。
2)方法特許の特許表示 方法特許に特許表示が不要なのは、特許表示が不可能だからである。
 装置と方法の特許権に対する侵害では、特許表示は必要である。註)方法クレームには2種ある。装置の製造方法(American)と、装置の使用方法(Devices)とでは、異なる扱いがされるべきと思うが、判例では明確になっていない。

*特許表示と損害賠償(287(a))、意匠権侵害の利得返還(289)
Nike, Inc. v. Wal-Mart Stores, Inc. and Hawe Yue, Inc. (Decided Mar. 12, 1998 CAFC)
(事実) 1993年10月13日 N社は"Air Mada Mid"というシューズの意匠出願をした。 1994年4月   意匠出願に係るシューズを売りだした。 1994年07月19日 意匠権が成立した。その時点でシューズは市場に十分行き渡り小売店にストックされていた。 N社は権利発行後、マーキングの手続を行なった。 1995年04月   H社はN社シューズの模倣品を輸入し、 1995年05月   W社が該模造品を小売販売した。 1996年01月18日 N社はW社及びH社を意匠権侵害でヴァージニア東部地裁に提訴した。 地裁は、W社及びH社はN社の意匠権を侵害していると判決し、289条に従ってN社に侵害者の利得"Profit"の返還を命じた。287(a)条は適用しなかった。 W社及びH社は、マーキングと賠償額について控訴した。
(背景) 287(a)条はマーキング(特許表示)に関する規定である。この規定は「特許権者は特許製品に特許表示を付すことができる。そして、特許表示などによるNoticeが無い場合はNotice以前の損害"Damage"が補償されない」旨を述べている。 一方、289条は意匠権侵害における賠償に関する規定である。この規定では「意匠権に係る意匠と同一又は模倣物を正当な権限なく販売等した者は、総利得"Profit"の範囲で権利者に返還する責任がある」旨を述べている。 "Damage"と"Profit"は長年区別されて扱われてきた。例えば、Braun Inc. v. Dynamics Corp. of America,975 F.2d 815(1992)では289条の利得の返還に284条の3倍損害賠償の規定を適用しなかった。本ケースでも、地裁は、利得と損害を区別し、損害に適用されるマーキングの規定を289条の利得の返還には適用しなかった。
(CAFC判示事項)
 マーキングの規定と賠償の規定とは並行して別々に発展してきた。マーキングの規定は、(1)罪の無い侵害を防ぐ、(2)権利者に特許表示を義務づける、(3)第三者が特許品か否かの判断するのを助けることを目的としている。 特許表示が無い場合、旧法では罰金を科せられたが、現在は"Damage"の賠償請求ができないと変更されている。 Damageの賠償においては、しばしば、侵害者の利得を権利者の損害として賠償させるケースがあった。一方、賠償の規定においては、意匠権侵害による損害の立証が困難であったことから、意匠権侵害者の利得を意匠権者に返還させるという289条を制定し、意匠権者の権利を強化した。 マーキングの規定におけるDamageの意味は、法制定の歴史等から、文字どおりの損害だけでなく、侵害者の利得によって計算される賠償も含むと解される。 従って、意匠権侵害における利得返還にマーキングの規定を適用できる。

|

January 21, 2011

25%ルールだけに依拠することを否定

Uniloc USA, Inc. v. Microsoft Corp., 2010-1035 -- On January 4, 2011

25%ルール

事件の概要:
 U社保有のUSP5490216をM社が侵害しているとU社が提訴した。該USPはソフトウェアのコピー防止方法に関する特許である。インターネット経由でユーザー登録するときにIDを発行して、適正なユーザーかどうか判断し、適正なら、USEモードに、不適正なDEMOモードになるというもの、M社のWordなどがこれを使用しているというものである。 地裁陪審は、侵害を認定し、但し、故意侵害はないとしている。388百万ドルの賠償を命令した。
 CAFCでは、地裁判断の侵害を支持、故意侵害なしも支持。賠償額の決定法(25%ルール依拠)について差し戻した。 米国特許法 284条 有効な特許権が侵害された場合、侵害を補償するのに適切な損害賠償額を認定しなければならない。
 *遺失利益の算定には、"But For"テストが適用される。「侵害がなかったら、特許権者がどれだけ利益を上げていたか"特許権者が立証しなければならない。

 立証要件:
  1)特許製品に対する需要があること
  2)非侵害の代用品が存在しないこと
  3)需要に対する製造
および販売の能力があること
  4)侵害が無ければ得られたであろう利益  損害賠償額として、リーズナブルロイアルティを下回らない額、利子、裁判費用を、侵害者に対して請求できる旨を規定している。3倍限度として増額できる。 リーズナブルロイアルティは、「侵害時点に両者が行うであろう、仮想的交渉に基づいて定められれるであろう額」である。 

ロイアルティ額算定の考慮要素:
  1)侵害時点において市場に非侵害の代替品が存在していたか否か
  2)代替製品との競争の厳しさから特許製品の価格を維持できていたか否か  など エンタイヤーマーケットバリュールール、特許された構成部分と特許されていない構成部分から装置であるとき、装置全体の価値に基づいて計算された損害賠償額を認めるというものである。 これは、特許された構成部分が「顧客の需要の根拠」となっている場合に適用される。
 25%ルールは、リーズナブルロイアルティを定める際の一つのツールとして使われてきた。 製品の予測利益に25%を掛けたもの実施料とするものである。
  利益を予測総売上で割って、利益率(例えば、16%)を算出し、その結果に25%を掛けた率を実施料率(例えば、4%)とするものである。
 この4%を総売上げに掛けて、その額をロイアルティ額とする。  ライセンシーに残された75%= 開発、操業、販促、  利益4分法= 人、物、金、知 それぞれを4分割し、知(特許権)部分を特許権の価値とする考え方。 利益3分法= 物、金、人(知) の考え方もある。

(本事件におけるCAFCの25%ルールに対する判断) 
「25%ルールは、仮想交渉での基準実施料率を決定する手段として根本的に欠陥がある。」 損害賠償額の分析において過去のライセンス契約を使用することは適切でないという近時の他の判決を支持した。過去のライセンスで使用された実施料と本件で争点となっている特定の仮想交渉とを関係付ける実際の根拠がなければならない。抽象的かつ著しく理論的な概念としての25%ルールは、この基本的な要件を充足しない。
 損害賠償額として認定されるべき合理的な実施料の計算において専門家が用いる方法を正当化するために、事案特定の証拠が重要であることを強調した。 「抽象的かつ著しく理論的な概念としての25%ルールは、この基本的な要件を充足しない。」 「本件の事実関係とは無関係の恣意的かつ一般的な規則として25%ルール」を不適切に用いた。
 連邦地裁は、25%ルールの適用を裏付ける事案特有の具体的な事実関係がない限り、25%ルールに基づく証拠が陪審に提出されることを防止する門番的な機能を果たさなければならない。
 本事件におけるCAFCの全体市場価値ルール(「entire market value rule」)に対する判断 「主張対象特許が侵害被疑製品の需要を喚起しない場合、製品の全体市場価値を参照することは不適切である」

*参考
 “余剰収入アプローチ”とは、問題の特許技術を採用した製品が生み出す利益と、旧製品・代替品あるいは別の技術を使用する後継品など当該特許技術を使用しない同種の製品が生み出す利益とを比較して、当該特許技術の価値を計る方法。このアプローチの実施には当該製品や関係する製品の予測価格や実勢価格、売り上げ、コスト、事業計画、競合分析、利益予測といった、企業にとってセンシティブな情報の閲覧が必要になる。

*参考:日本の近時判決で注目したもの
 東京地裁 平19年(ワ)3494 102条2項に基づく損害算定。 特許権者は、特許発明を実施していない。特許発明に類する製品を製造販売している。 侵害者が特許発明に係る製品を製造販売している。
 102条2項は、損害額の推定規定であり、損害の発生までを推定する規定ではないため、侵害行為による遺失利益が発生したことの立証がない限り、適用されないものと解される。もっとも、侵害行為による逸失利益が生じるのは、権利者が当該特許を実施している場合に限定されるとる理由はなく、諸般の事情により、侵害行為が無かったならば、その分得られたであろう利益が権利者に認められるのであれば、102条2項が適用されると解すべきである。
 被告製品は、腎疾患治療薬である原告製品の後発製品として製造承認を受け販売されているものであり、被告製品が製造販売されることで新たな需要を生み出すものではなく、腎疾患治療薬の市場において原告製品と競合し、シェアを奪い合う関係にあること、球状活性炭の腎疾患治療薬における原告製品のシェアが高いことが認められ、被告製品が無かったとした場合に原告製品ではなく他の後発医薬品が売れたであろうとの事情を裏付ける証拠もない本件においては被告らによる侵害行為が無ければ得られたであろう利益が原告に認められるので、102条2項が適用されるものと解する。

 

|

November 23, 2010

不公正行為の認定要件(MaterialityとIntent to deceive)

I.Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. 2008-1511 -- On April 26 2010 CAFC

判決:LINN, FRIEDMAN, and DYK, 判決文DYK 一部反対意見LINN  

1.事件概要 アボット(A)社が使い捨て血糖試験紙に関するUSP5820551の侵害であるとしてBecton社等を訴えた。A社特許551の審査引例に対応する欧州特許出願の審査時に主張した内容をIDSしなかった。地裁は、この欧州特許における主張内容はmaterialityが高く、その不提出はIntent to deceiveがあるので不公正行為と認定し、権利行使不能を判決した。CAFC控訴審でも地裁判断を追認した。T社が大法廷審議を求めた。CAFCは大法廷審議開始を決定した。

2.背景(551特許の内容)
1. A single use disposable electrode strip for attachment to the signal readout circuitry of a sensor to detect a current representative of the concentration of a compound in a drop of a whole blood sample comprising: a) an elongated support having a substantially flat, planar surface, adapted for releasable attachment to said readout circuitry; b) a first conductor extending along said surface and comprising a conductive element for connection to said readout circuitry; c) an active electrode on said strip in electrical contact with said first conductor and positioned to contact said whole blood sample; d) a second conductor extending along said surface comprising a conductive element for connection to said read out circuitry; and e) a reference counter electrode in electrical contact with said second conductor and positioned to contact said whole blood sample, wherein said active electrode is configured to be exposed to said whole blood sample without an intervening membrane or other whole blood filtering member and is formed by coating a portion of the first conductor with a mixture of or layers of an enzyme which catalyzes a redox reaction with said compound in whole blood and a mediator compound which transfers electrons from said redox reaction to said first conductor to create a current representative of the concentration of said compound in said whole blood sample; and wherein said active electrode which is formed on a portion of said conductor is not in electrical contact with said reference counter electrode but these electrodes are so dimensioned and positioned that they can be simultaneously completely covered by a single drop of whole blood such that this drop provides an electrical path between these electrodes to support said current representative of the concentration of said compound in said whole blood sample.

(551特許の審査経過)
 551特許は1984年に出願され、その後、数回の継続出願を行い、最後に上記の下線部を追加する補正をした。 551特許の審査において、先行文献USP4545382が、全血用途で、膜を用いないブドウ糖センサーを開示しているのか否かが争点となった。
 A社(Lawrence Pope;特許弁護士)は、面接において、先行文献USP4545382では、全血用の試験装置では、保護膜を必要としていることを指摘した。 審査官は、発明時において、膜が必要であったことを示す宣誓書または証拠を示せば拒絶を撤回することに同意した。
 そこで、A社(Dr. Sanghera;研究開発部長)は、当業者であれば、先行文献USP4545382に触れたとき「全血サンプルに使用する場合、酵素と媒体により構成される活性電極には保護膜が必要と感じただろうone skilled in the art would have felt that an active electrode comprising an enzyme and a mediator would require a protective membrane if it were to be used with a whole blood sample.」 従って、先行文献382の「任意またはむしろ好ましい」ことを教えているとは当業者は読まない。「任意またはむしろ好ましい」は特許的な言い回しである。
  Therefore, he is sure that one skilled in the art would not read lines 63 to 65 of column 4 of U.S. Patent No. 4,545,382 to teach that the use of a protective membrane with a whole blood sample is optionally or merely preferred. One skilled in the art would not have read the disclosure of the Higgins patent (U.S. 4,545,382) as teaching that the use of a protective membrane with whole blood samples was optional. He would not, especially in view of the working examples, have read the “optionally, but preferably” language at line 63 of column [4] as a technical teaching but rather mere patent phraseology. There is no teaching or suggestion of unprotected active electrodes for use with whole blood specimens in this patent 」との証言を提出した。これによって、551特許が登録された。

(これに先立つEP特許庁における審査)
 A社は先行文献USP4545382に対応するEP0078636において審査を受けていた。 636特許の審査において、ドイツ文献D1(半透明膜)との差異を説明する際に、出願人の欧州代理人は「保護膜は任意であるが、生体血液の測定においては保護膜は好ましくは用いられる。保護膜の目的は、生体内測定において好ましく使用され、使用中に粒子が抜け落ちることを防止し、安全に測定するためであり、基材に対する浸透性制御ではない。The protective membrane is optional, however, it is preferred when used on live blood. The purpose of the protective membrane of the patent in suit, preferably to be used with in vivo measurements, is a safety measurement to prevent any course [sic] particles coming off during use but not a permeability control for the substrate. 」という旨の主張をし、この開示は明らかに明瞭な意味を成す"unequivocally clear"と述べた。
 A社は、EPOにおけるこの主張内容をUSPTOに提出しなかった。 (地裁&CAFCの判断) 地裁は、この欧州特許庁への主張内容は、米国特許庁への主張内容と矛盾しており、誠実義務違反に当る、また、正反対の主張をした事実は、米国特許審査に重大な影響を与える内容なのでMaterialityを有すると認定しました。また、総合的な状況判断(宣誓供述書を提出する場合には騙すことになら無い様に配慮しなければならないこと、Materialityが在ること)から、騙す意図もあったと認定しました。 その結果、地裁は権利行使不能の判決をした。その後のCAFC控訴審(判事DYK)は地裁の判断を追認した。 LINN判事 Materialityについて 欧州特許出願における欧州代理人の主張中の“optionally, but preferably”の用語から、地裁は保護膜を使用しないことがあると誤った推定をしている。Optionallyは間質液に、preferablyは血液に関わっていると推定するのが適切。 Intent to deceiveについて 文献を知らなかった場合、または文献がinmaterialであると善意で信じていた場合は、どうなるのか。その場合に騙す意図があったと言えるのだろうか。このような点などを考慮していないのでKingsdown判決の基準に反する。

(大法廷における争点)
 1)不公正行為の判断で、materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは変更すべきかまたは置き換えるべきか?
 2)もしそうなら、どのように変更すべきか、どのようなものと置き換えるべきか?もしそうならば、フロードまたはunclean handの適正な基準は何か?
 3)Materialityの適正な基準は何か? 特許庁の規則はどのような役割を果たすべきか? materialityであるとするために、追及されている不適切行為ではないが、1以上のクレームに特許付与しなかったということが要求されるか?
 4)Materialityから意図があったと判断するのに適正な状況とは何か?
 5)materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは捨て去るべきか?
 6)他の連邦機関におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、コモンローに基づくmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、それらは、特許におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準を明らかにする。

II.判決例
 1.今までの基準となってきた古い判決

 Kingsdown Medical Consultants, Ltd v. Hollister Inc.事件(1988;大法廷)では、 特許審査経過における出願人の錯誤に起因する不開示行為は、誤導の意図と判断されるかという問題について、「裁判所は、特定の行為が重過失になるという認定によってPTOを欺く意思を推論することが自然に正当化される訳ではなく、善意を示す証拠を含め全てを考慮した関連行為が、欺く意思を認定するのに十分な「誤導の意図」に関する決定は、全ての証拠に基づかなければならない」と判断した。  In Rohm & Haas Co. v. Crystal Chemical Co.事件(1983)では、不公正行為が出願手続中に発見された場合、出願人は不実表示や何が真実かにつき審査官に知らせる積極的な手続をとることにより不公正行為を治癒あるいは克服することが可能であるとしている。

  2.Terasense判決前後の判決例

RADER判事
 Ferring B.V. v. Barr Laboratories, Inc.事件(2006)では、発明者でない者が宣誓供述を行った。このとき宣誓供述を行った者と発明者とが特別な関係(利害関係)を有する者であることをUSPTOに開示しなかった。この不開示によって騙す意図があったと認定された。 ただし、Newman判事は、Kingsdown事件を引用して、詐欺的意図に関する明白かつ説得力のある証拠はないにもかかわらず,Materialityが高いというだけで安易に詐欺的意図を推定していると反対意見を述べている。

Moore判事
ESPEED, Inc. v. Brokertec USA 2006-1385, March 20 2007  不公正行為は、騙す意図を持って、重要事実の積極的な虚偽陳述、重要情報の不開示、または誤情報の提出する行為である。 虚偽陳述または不開示が非常に重要な場合は、騙す意図が小さくても、不公正行為になる。重要性レベルと騙す意図レベルとのバランスを考慮し、権利行使不能の決定をしなければならない。
 ◎重要性: 原告は「①NewRuleのためのコードを使用したということにならない。」「②宣誓書とともに真実のソースコードが記載された書類を提出している。」として発明者の宣言は重要でないと主張した。 しかし、重要性は、合理的な審査官が特許すべきか否かを判断する上でそれを重要と考えるか否かの基準で、決定される。虚偽宣言や不実の宣誓書の提出は本来的に重要である。 ①NewRuleのためのコードを使用してないとしても、SuperSystemに該コードが含まれていたということを発明者は知っていた。SuperSystemに該コードが含まれているという事実は合理的審査官基準で重要性がある。 ②真実の書類を提出していても、それが「書類攻めBlizzard of Paper」になり、不実の供述書で審査官にさらなる調査を要しないと誤認させている。真実の情報を開示したということにならない。
 ◎騙す意図: 騙す意図は、出願人のすべての行動周辺の事実及び状況から判断される。 原告は、「供述書とともに真実のソースコードが記載された書類を提出したのは、善意の行動」であると主張した。 しかし、供述書の積極的な提出は、それが依拠されること(審査官がその供述書によって影響されること)を意図したものと解釈される。供述書はPTOを騙すために情報を選択して提示したもの"the chosen instrument of an intentional scheme to deceive the PTO"であるとして、騙す意図ありと認定した。

Moore判事:
Ring Plus, Inc. v. Cingular Wireless Corp. Fed Cir 2010 Judge Moore appears to give his position with respect to Question 5 – “Under what circumstances is it proper to infer intent from materiality?  MaterialityからIntentを推認することが適切な環境は? Although intent to deceive can be inferred from circumstantial evidence, the evidence must still be clear and convincing; a showing of materiality alone does not give rise to a presumption of intent to deceive.  Intentは全状況証拠から推認できるが、その証拠は、明確且つ確信に足りうる証拠である必要がある。Materialityだけを示しただけでIntentを推定することはできない。 Even gross negligence does not of itself justify an inference of intent to deceive. Any inference of deceptive intent must be the single most reasonable inference able to be drawn from the evidence to meet the clear and convincing standard.  重大な過失であっても、Intentの推認を正当化することはない。明確且つ確信に足りうる証拠から引き出される合理的な推論がなければ、Intentを推認できない。

Clevenger判事:
Digital Control Inc. v. Charles Mach. Works, 437 F.3d 1309, 1313 (Fed. Cir. 2006) MICHEL判事: Star Scientific, Inc. v. R.J. Reynolds Tobacco Co. 事件(2008)では、(1)the applicant made an affirmative misrepresentation of material fact, failed to disclose material information, or submitted false material information, 重要事項の不実陳述、重要情報の不開示、または虚偽情報の提出(重要性)と、(2)the applicant intended to deceive the [PTO].PTOを騙す意図と、を示す証拠を提示しなければならない。さらに、それぞれ(materialityおよびintent to deceive)についての閾値を明白且つ説得力ある証拠で立証しなければならない(Digital Control Inc. v. Charles Mach. Works, 437 F.3d 1309, 1313 (Fed. Cir. 2006))。この引き上げられた立証責任を果たしたとしても、地裁は、equityの観点から、出願人は権利行使不能とされるほどにとんでもないことegregiousをPTOにしたか否かを決定しなければならない。だから、明白かつ説得力ある証拠により重要性と騙す意図の両方の閾値を立証できたとしても、裁判所は権利行使不能との判決をしなくてもよい場合がある。不公正行為によって権利行使不能とする罰則は、もともとは、特許庁に対する詐欺行為(Fraud on the Patent Office)の場合に適用されていたものである。特許性のある発明についての権利をすべて行使不能にするという厳しい罰則であるから、厳格な適用が要求される。

Newman判事
 Optium Corporation V. Emcore Corporation(2009)事件では、highly material prior artを開示していない場合でも、inequitable conductの立証のためには、specific intent to mislead or deceiveを示す証拠が必要。 Definition of “intent”- The rule that the “intent” element of inequitable conduct is not simply intent to take the action or omission complained of, but intent to deceive or mislead the patent examiner into granting the patent.  不公正行為は、情報を隠す意図ではなく、騙す意図を要する。 情報不開示の状況においては、出願人がよく考えた上で、知っていた重要な引例の提出を差し控える、決定をしたことを示す必要がある。Inequitable conduct requires not intent to withhold, but rather intent to deceive. That is, one must have intended to act inequitably. In situations of nondisclosure of information rather than affirmative misrepresentation, clear and convincing evidence must show that the applicant made a deliberate decision to withhold a known material reference.  情報のmaterialityが高いということだけで、Intent to deceiveを推定することはできない。Intent to deceiveはMaterialityとは分離して証明する必要がある。Burden on challenger- Intent to deceive cannot be inferred from a high degree of materiality alone, but must be separately proved to establish unenforceability due to inequitable conduct.  立証責任の転嫁 Burden Shift Only when the challenger has met its threshold burden of showing intent does the burden of coming forward with evidence shift to the applicant. … The patentee need not offer any good faith explanation unless the accused infringer first carried his burden to prove a threshold level of intent to deceive by clear and convincing evidence.

Prost判事(Optiumケースの反対意見):
 Optium Corporation V. Emcore Corporation(2009)事件: Judge Prost appears to give his position with respect to Question 5 – “Under what circumstances is it proper to infer intent from materiality? 多数意見は、Materialityが高くても、Intent to deceiveの推定とは関係がないとしているようであるが、“[M]ajority opinion seems to imply that a high level of materiality is entirely irrelevant to an inference of intent.”  If a reference is of very high materiality, and it is shown that the patentee knew of the reference, then it is more probable that the reference was withheld from the examiner with deceptive intent, as compared to a reference of low materiality.  低いmaterialityの文献に比較して、高いmaterialityの文献を提出しなかったということは、騙す意図の可能性が高いと言えるのではないか。

DYK判事
 Golden Hour Data Systems, Inc. v. emsCharts, Inc. and Softtech, LLC CAFC Aug.9 2010  この事件では、地裁は、発行日付がない文献(カタログ)であってもIDSとして、情報開示の対象になることを確認しました。すなわち、Materialityがあると認定しました。CAFCはこれについて支持した。 ところで、カタログは提示する予定であったが、開示情報を選択した結果として統合システムの内容が不開示となった。地裁は、カタログを選択的に開示した行為は、Intentありと認定した。 しかしCAFCは、重過失は不公正行為ではない。日付を有しない文献を米国特許庁へ故意に提供しなかったことの事実(不開示情報の選択に当たって、日付の有り無しだけでなく、内容を理解して関係有り無しの判断をしたかなどの)認定が不十分であるとした。すなわち、Intentの立証が不十分としました。そのため、CAFCは事件を地方裁判所に差し戻しました。

NEWMAN判事(Goldenケースの判定意見)
 事実審で騙す意図の立証ができなかった被疑侵害者に、さらに立証の機会を与えることになるので、差し戻しは適切で無い。Therasense事件のenBancの結論がでるまで、この事件の判決を延期すべきであったと述べている。認定基準が低い傾向 認定基準が高い傾向DYK FRIEDMAN NEWMANPROST LINN MICHELRADER MOORE [CLEVENGER]

III. 不公正行為認定基準に関する予測(私見)

 en bancの判決がでることによって、不公正行為認定の基準がより統一され、より明確になると思われる。が、その前に、各判事の出した判決例の傾向から、en bancの各論点についての回答を予測(私の希望的観測)してみることにする。
 1)不公正行為の判断で、materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは変更すべきかまたは置き換えるべきか?
(私見) おそらく、materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングで不公正行為を判断するという考え方は変えないであろうと思う。ただし、特許権に関する不公正行為の基準と、他の法域における不公正行為の基準との統一が図られるのではないかと考える(論点6)。
 2) 1)を否定したので、コメントなし。
 3)Materialityの適正な基準は何か? 特許庁の規則はどのような役割を果たすべきか? materialityであるとするために、追及されている不適切行為ではないが、1以上のクレームに特許付与しなかったということが要求されるか?
(私見) 不公正行為認定におけるMateriality Referenceと、権利無効認定におけるReference for invalidityとは、その基準が異なっているはずである。Materialityというのは、規則では、審査官が知っていたら審査において考慮したであろう重要な情報という定義になっている。Materialityは、権利を無効にする、または特許付与しないというような情報とは異なり、無効または拒絶理由の基礎とできるほどに強力な情報というところまでは要求されない。この定義は妥当であろうと思う。 高いmaterialityを有する文献は、無効理由の根拠となり得る文献になる可能性が高い。高いmateriality文献が存在していたことを知っていたという証拠のみで、Intentを推認される基準では、権利無効となる範囲を、不公正行為による権利行使不能という別の争点で、事実上広げていることになりはしないだろうか。したがって、4の争点のように、高Materialityであるから騙す意図があったと単純に判断するのは、適当でないと私は考える。
 4)Materialityから意図があったと判断するのに適正な状況とは何か?
(私見) Materialityだけから意図を推定するという判断手法は、否定されるのではないかと、考える。Kingsdown大法廷判決の趣旨(全てを考慮した関連行為から意図を判断する)に沿ったものになると考える。
(開示によって誤導した場合:)
 積極的に宣誓供述書によって述べた内容によって、審査官を誤導した場合には、意図ありとされる可能性が高くなっても仕方がないと考える。ただ、確信犯の場合はどうなるだろうか。出願人が、真実であると信じ込んで行ったものであるから、騙そうとしたわけではないので、この場合は、重要性が高い場合でも単純に意図ありとすべきではないと考える。
(非開示で誤導した場合:)
 一方、文献を善意で知らなかった場合、知っていたが重要でないと信じるべき判断基準がある場合には、単純に意図があったとすべきではないと考える。また、重要性の高さともリンクすべきでないと考える。 調べれば容易に知り得たという場合(例えば、自己の先願)は、どうか。情報開示を怠けたことになるが、騙そうとする意図があったのか微妙である。騙す意図ありとするには、文献の重要性が非常に高い場合に限るべきである。 また、IDSでは英語文献以外は文献の抄訳が要求される。抄訳が付いてないと正式なIDSとみなさないことになっている。抄訳が間違っていたりすると騙す意図があったと疑われることもある。
 5)materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは捨て去るべきか?
(私見) 重要性が高ければ、欺く意図が低かったとしても不公正行為になるというバランス基準を単純に適用するというのは否定されるのではないだろうか。 重要性が高いことが立証されても、欺く意図が推定されることはなく、他のすべての関連行為の状況から欺く意図が重要性の立証とは別個に立証されなければならないという判断基準になるのではないだろうか。 Clevenger判事やMichel判事は、materialityの立証、Intent to deceiveの立証がなされた上で、さらにegregious(とんでもない)か否かの判断基準を採用している。権利不行使にするという刑罰的規定の適用はより高い基準で行われるべきであろうと思うので、egregious(とんでもない)基準を不公正行為認定判断の一部に採用すべきと私は思う。
 6)他の連邦機関におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、コモンローに基づくmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、それらは、特許におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準を明らかにする。
(私見) 他の法域における不公正行為の認定基準との統一が図られることは重要であろう。
以上

|

May 18, 2010

Therasense Inc. v. Becton, Dickinson and Co. 2008-1511 Jan. 25, 2010

不公正行為に関する大法廷審理開始 CAFC en banc April 26, 2010

(概要)欧州特許出願の審査時に主張した内容をIDSしなかったということで、不公正行為が認定された事件について、CAFCは大法廷審理を開始することを決定しました。

対象US特許は、全血試験紙に関する発明についてのUSP5820551です。この特許の最初出願は1984年になされ拒絶と継続出願とを繰り返していた。6回目の継続出願時の審査において、出願人は「保護膜を有さない」という限定をし、引例は保護膜が必須なので本願は特許性があると主張しました。その結果、特許されました。

551特許の審査引例として挙げられたUSP4545382(A社出願)に対応する欧州特許EP0078636の審査において、別の引例が挙げられていた。この引例に対して、出願人は「保護膜は必要に応じて在ればよい」という旨の主張をしました。

地裁は、この欧州特許庁への主張内容は、米国特許庁への主張内容と矛盾し、米国特許審査に重大な影響を与える内容なのでMaterialityを有すると認定しました。また、総合的な状況判断から、騙す意図もあったと認定しました。

その結果、地裁は権利行使不能の判決をしました。その後の控訴審は地裁の判断を追認しました。

が、Therasenseが大法廷審理を申立てました。CAFCはen banc 審理の開始決定をしました。

en banc での論点は、以下のとおりです。

1)不公正行為の判断で、materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは変更すべきかまたは置き換えるべきか?
2)もしそうなら、どのように変更すべきか、どのようなものと置き換えるべきか?もしそうならば、フロードまたはunclean handの適正な基準は何か?
3)Materialityの適正な基準は何か? 特許庁の規則はどのような役割を果たすべきか?不正行為であるとされる行為が無かった場合に、1以上のクレームに特許付与しなかったということが、Materialityであるために必要か?
4)Materialityから意図があったと判断するのに適正な状況とは何か?
5)materiality重要性とIntent欺く意図とのバランシングは捨て去るべきか?
6)他の連邦機関におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、コモンローに基づくmateriality重要性とIntent欺く意図の基準であろうと、それらは、特許におけるmateriality重要性とIntent欺く意図の基準を明らかにする。

以上。

(私見)

 米国特許事務所に居たときに、同様の事件に出くわしたことがあります。

 その特許は米国と欧州に出願されていた。欧州では進歩性無しに対する応答に際して、請求の範囲を限定し且つ実験成績報告書を提出した。その結果が特許になった。欧州の実験成績報告書には、米国特許請求の範囲に包含されるものが、比較例(欧州特許発明でない態様例)として提示されていた。

 米国でも、進歩性無しの拒絶を受けたのだが、別の実験成績報告書を提出して、これも特許になった。米国特許の請求の範囲は、欧州の請求の範囲に追加された限定は記載されず、広い権利範囲となった。

 このとき、今は亡き米国特許弁護士に、欧州の実験報告書の比較例データを米国特許庁に提出しないのは、不公正行為ではないのかと質問したところ、不公正行為であると主張するのには無理があると意見され、Kingsdown事件を勉強しなさいと判決文のコピーを手渡されたことを思い出しました。もう10年以上前のことです。

 Therasense事件のen bancの結論がどうなるか、監視を続けていきたいと思います。

 

|

July 08, 2009

米国規則改正に関する訴訟 CAFC大法廷へ Tafas v. Doll 2008-1352

2009年3月20日にCAFCの判断が出されたのですが、このほど、CAFC大法廷(en banc)で審議することになったようです。

1)一出願におけるクレーム数を制限
2)RCEの回数制限
3)ESDの提出義務
4)継続出願の回数制限

に係る規則を作る権限が特許庁にあるのか否かが争点です。

米国規則改正はまだまだ決着が付かないようです。

|

March 25, 2009

Tafas v. Doll 2008-1352 -- On March 20 2009 米国規則差止事件のCAFC判決

忘れられていた感があった、規則改正ですが、
 CAFCが、判決を出したようです。

 判決全文を詳細に読んだわけではありませんが、判決では次のようなことを言っているようです。

次のことについてUSPTOは規則改正の権限を有する。
 (1)RCEを1回に制限すること
 (2)ESDの提出がない場合に、独立クレームを5個に、全体でクレーム25個に制限すること
 (3)先行技術の調査結果、および先行技術に対して特許性がなぜ在るかについての説明を記したESDを要求すること

次のことについては35USC120に反するので、USPTOは改正権限を有さない。
 (4)継続出願を2回に制限すること 

 この判決を受けて、お蔵入りした規則改正が、復活するのか、状況をみたいと思います。

|

より以前の記事一覧