米国規則改正に関する訴訟 CAFC大法廷へ Tafas v. Doll 2008-1352
2009年3月20日にCAFCの判断が出されたのですが、このほど、CAFC大法廷(en banc)で審議することになったようです。
1)一出願におけるクレーム数を制限
2)RCEの回数制限
3)ESDの提出義務
4)継続出願の回数制限
に係る規則を作る権限が特許庁にあるのか否かが争点です。
米国規則改正はまだまだ決着が付かないようです。
2009年3月20日にCAFCの判断が出されたのですが、このほど、CAFC大法廷(en banc)で審議することになったようです。
1)一出願におけるクレーム数を制限
2)RCEの回数制限
3)ESDの提出義務
4)継続出願の回数制限
に係る規則を作る権限が特許庁にあるのか否かが争点です。
米国規則改正はまだまだ決着が付かないようです。
忘れられていた感があった、規則改正ですが、
CAFCが、判決を出したようです。
判決全文を詳細に読んだわけではありませんが、判決では次のようなことを言っているようです。
次のことについてUSPTOは規則改正の権限を有する。
(1)RCEを1回に制限すること
(2)ESDの提出がない場合に、独立クレームを5個に、全体でクレーム25個に制限すること
(3)先行技術の調査結果、および先行技術に対して特許性がなぜ在るかについての説明を記したESDを要求すること
次のことについては35USC120に反するので、USPTOは改正権限を有さない。
(4)継続出願を2回に制限すること
この判決を受けて、お蔵入りした規則改正が、復活するのか、状況をみたいと思います。
損害賠償額~弁護士費用の請求~例外的事件とは?
Ⅰ. Takeda Chemical Industries, Ltd. v. Mylan Laboratories, Inc. and Alphapharm PTY., Ltd. 2007-1269 CAFC December 8, 2008
Lourie, Rader and Bryson(判決文:Lourie)
Court Upholds $16.8 Million Attorney Fee Award Against Generic Drug Firms That Made Baseless Certifications of Patent Invalidity
(概要)特許権者TakedaがMylanおよびAlphaparmを特許侵害で提訴し、地裁が特許侵害の判決をした。損害賠償としてTakedaが弁護士費用の請求を申し立てた。2006年9月20日に地裁はこの申立を認めた。2007年3月21日に補償すべき弁護士費用として、Mylanが1140万ドル、Alphapharmが540万ドルおよび利子を、Takedaに支払へとの決定をした。
MylanとAlphapharmはCAFCに控訴したが、CAFCは地裁の判断に誤りはなく、権限の濫用でもないとして、地裁の判断を確認した。
(背景)米国特許4687777はインスリン抵抗性改善薬(塩酸ピオグリタゾン:製品名「ACTOS」)を包含する権利である。
一方のMylanとAlphaparmはジェネリック製薬会社で、塩酸ピオグリタゾンのジェネリック薬の製造承認申請を行った。
ジェネリック薬の申請(ANDA)には、正規薬を包含する特許権の存在、その特許権とジェネリック薬との関係を証明する必要がある。MylanとAlphaparmはANDAにおいて777特許は非自明のために無効であるとの証明(Paragraph IV letter)を行った。21USC355(j)
これに対抗してTakedaは特許侵害でMylanとAlphaparmを地裁に訴えた。
地裁公判において、MylanとAlphaparmは、ANDAに添付した証明書で展開した特許無効の論点とは異なる論点を主張した。
Alphaparmは、USP4287,200特許に記載の化合物bを示し、ピオグリタゾンは構造的に自明であると主張した。
MylanはTakedaがUSPTOに不実表示という不公正行為を行ったと主張した。
2006年2月21日、地裁は特許発明は非自明であり、権利行使可能であると認定した。
2006年3月13日、地裁の最終判決を行った。
Takedaは、例外的事例なので、弁護士費用の支払をMylanとAlphaparmに求める申立をした。
例外的事例の理由として、MylanとAlphaparmは善意でなく、Paragraph IV letterを提出し、訴訟において不品行を引き起こしたと、Takedaは主張した。
2006年9月20日、地裁は公判で777特許を有効であるとしたのと同様にParagraph IV letterおよび訴訟手続中の行為についてTakedaの申立に同意した。
AlphaparmのParagraph IV letterは、真価に欠け、根拠のない(Baseless)ままにprima facie(一見して)無効を論理展開していると地裁は認定した。
letterで挙げていた2種の化合物とは異なる化合物bを先導物質として挙げたが、その化合物bがどうして先導物質であるのかという理由を説明できなかったという、公判中のAlphaparmの不品行を認定した。
同様に、MylanのParagraph IV letterは悪意で提出され、根拠の無い777特許の無効主張(化合物14のsimply replaced its benzene ring with a pyridine ring)が展開されている。
Mylanは、訴訟中に、Paragraph IV letterで展開した主張(ピオグリタゾンは、200特許に開示された化合物16と14に基づいて自明である)をあきらめた。
その代わりに、Milanは、Takedaが先行技術として化合物 3894を開示したことを不実開示であると主張した。しかし、化合物 3894の開示は、TakedaがUSPTOに情報を隠したまたは不実情報を開示したとの根拠にならないと地裁は判断した。
これらのMylanの訴訟中の行為は、弁護士費用支払に値する例外的事例であると認定した。
2007年3月21日、補償すべき弁護士費用として、Mylanが1140万ドル、Alphapharmが540万ドルおよび利子を、Takedaに支払へとの決定をした。
MylanとAlphaparmは、それぞれ別々に控訴した。2007年12月17日に両控訴審は併合された。
(CAFC)
A.例外的事例とは
Attorney fees may be warranted for litigation misconduct
or “if both
(1) the litigation is brought in subjective bad faith, and
(2) the litigation is objectively baseless.”
B:Alphapharm
Alphapharm’s Paragraph IV letter:
were baseless because of undisputed evidence of pioglitazone’s superiority and that Alphapharm abandoned these arguments at trial because “they were unsupportable, not because Alphapharm made a tactical decision regarding which argument should be emphasized at trial.”
The court concluded that the deficiencies in Alphapharm’s Paragraph IV letter were “so glaring” that they highlighted that Alphapharm “acted in bad faith in filing its Paragraph IV certification.
Alphapharm’s litigation misconduct. :
the court discussed assertions made by Alphapharm that were unrelated to the obviousness claim and “created confusion, wasted valuable court time, and increased the burden of the litigation on the parties.”
“vexatious or unjustified litigation” or “frivolous suit,”
one of the purposes of § 285 is to prevent “‘gross injustice’ when the accused infringer has litigated in bad faith.”
C:Mylan
Mylan’s invalidity argument in its certification letter appears even more baseless than Alphapharm’s.
Mylan’s defense of the merits of its Paragraph IV letter as “utterly frivolous.”
Mylan did not present any evidence that Takeda hid or misrepresented any information to the PTO.
Ⅱ.ICU Medical, Inc. v. Alaris Medical Systems, Inc. 2008-1077 -- On March 13, 2009
MICHEL, PROST, and MOORE(判決文:MOORE)
Defendant in Patent Infringement Suit Awarded $4.6 Million in Attorney Fees Based in Part on Frivolous Claim Construction
(概要) 2004年6月、ICUが医療用輸液器具の弁に関する特許権6,682,509を侵害しているとしてAlarisを提訴した。Alarisが特許無効を主張したので、ICUは訴状を補正し特許権5,685,866; 5,873,862;および 6,572,592を侵害しているとの訴えに変更した。該権利は、the spike claims, the spikeless (or spike-optional) claims,および the tube claimsに分類された。地裁はspike claimsについては非侵害、spikeless claims,および tube claimsは記載不備によって無効との判断をした。さらに、Alarisの弁護士費用支払の申立を地裁が認めた。ICUは控訴した。CAFCは地裁の判断を支持した。
(背景)
A: Spike claims
クレーム解釈の手法
the specification describe the claimed invention in ‘full, clear, concise, and exact terms
not only is the written description helpful in construing claim terms, but it is also appropriate “to rely heavily on the written description for guidance as to the meaning of the claims.”
スパイクの意味:spike to mean “an elongated structure having a pointed tip for piercing the seal, which tip may be sharp or slightly rounded.”
9. A valve, comprising:
a body having a cavity therein;
a spike located within said cavity in said body; and
a seal located on said spike, said seal comprising a series of O-ring elements.
the specification “repeatedly and uniformly describes the spike as a pointed instrument for the purpose of piercing a seal inside the valve.”
B: Spikeless claims
明細書記述要件:発明の詳細な説明の欄に記載された発明を請求する。
ICU filed a continuation-in-part application in 1992, to which both patents claim priority. ICU then eventually filed an amendment to include spikeless claims in November 2001, leaving the specification unchanged.
the asserted spikeless claims were not filed with the original application; rather they were added years later during prosecution.
C: Tube claims
specification discloses a tube as part of the valve body rather than as located within the seal or distal end of the body. the specification draws a clear distinction between a spike and a tube.
D: ICUが提訴に至るまでの事情
ICU admits that it did not originally sue on its ’862 and ’866 “spike” Patents, which issued several years earlier in 1997 and 1999, because of the “substantial difficulty” it would face in asserting the “spike” claims against Alaris’ products, which were “spikeless.”
Furthermore, Alaris points to evidence showing that, prior to filing this case, ICU did not believe that the SmartSite Valves infringed its “spike” claims. This evidence includes statements by ICU’s inventor and internal personnel separately indicating their views that the Alaris SmartSite Valve had no “spike” element and that the SmartSite Valve was an appreciably different device from any of ICU’s valves.
E: the Federal Circuit upheld a $4.6 million attorney fees award in favor of Alaris.
以上。
Acumed LLC v. Stryker Corp. 2008 - 1124 -- On December 30 2008
差止請求の4要件
MAYER LOURIE and GAJARSA(判決LOURIE)
(概要)Acumed社の求めた差止を認めたオレゴン地裁の決定に対してStryker社がCAFCに控訴した。CAFCは地裁の決定に誤りはないとして地裁決定を支持した。
(背景)Acumed社は米国特許5472444を所有している。該特許は上腕骨の骨折の治療に用いられる上腕骨近位端側のくぎ(PHN)に関する発明をカバーするものである。PHNを折れた上腕骨のシャフト部に刺し込むことによって、骨破片を相互に螺着し、固定することができる。Acumed社はPHNを製品名「Polarus」で販売していた。
2004年春、Stryker社の「T2PHN」が444特許を侵害しているとして、Acumed社は提訴した。
2005年9月20日、陪審はStryker社が故意に侵害していること及びAcumed社の遺失利益及び合理的実施料に基づく損害賠償請求を認めることを評決した。
2006年2月22日、地裁判事は、Acumed社が申立ていた差止請求を認める決定をした。この決定は、「差止請求を拒否する正当な理由があるという特殊な状況でないかぎり、一旦特許が有効で且つ特許が侵害されているとの判決が成されたら差止請求を認めるという原則」に基づいて行われた。
Stryker社はこの決定に対してCAFCに控訴した。このころ、最高裁がe-bay事件において、特許事件における差止請求を認めるための4要件を示した。
2007年4月12日、CAFCは地裁の故意判断を支持したが、差止請求についてe-Bay事件を踏まえ再考するように地裁に差し戻した。
2007年6月14日、Acumed社は「T2PHN」の差止請求を新たに地裁に申し立てた。Stryker社は5人の医師たちの宣誓証言に支持された差止請求申立に反論する書類を提出した。Acumed社は未提出であった「Polarus」に関する図面やパンフレット等に基づき、弁駁を行った。2007年7月27日、Stryker社はAcumed社の提出した新証拠及び新主張(時機に遅れた主張)を認めるべきでないとの申立を行った。
2007年11月20日、Stryker社の申立が地裁によって拒否された。理由:Acumed社の提出した新証拠等はStryker社の答弁に対するものである。Stryker社は口頭審理においてAcumed社が提出した新証拠に対する反証機会が十分に与えられている。
地裁は4要件の判断を行った。
①Acumed社は回復不能な損害を被ったか?
②法律で認めらた補償によってもその損害を補うには不十分であるか?
陪審は遺失利益と遺失販売について既に決定している。444特許をライセンスしているという意義が下がってしまった。また遺失占有市場に基づき差止を認めた判例を地裁は考慮に入れた。
③原告と被告との困窮具合のバランスは適切か?
当事者の相対的企業規模を考慮した。Acumed社は小さい企業で、「Polarus」は該社の主力商品であった。Stryker社は「T2PHN]の開発に要した費用を考慮すべきであると反論したがこれは拒否された。なぜなら、Stryker社は侵害を避けるための設計努力をしていなかった。
④公共の利益が害されるか否か?
医師は「Polarus」を使いたくなかったら、他に存在する非侵害品を使用できる。
以上のことから、地裁は、差止請求を認めるとの判決をした。
Stryker社はこの判決に対してCAFCに控訴した。
(CAFCの判断)
A. e-Bay判決で確認された差止の4要件は以下のものである。『
①回復不能の損害を被っていること(it has suffered an irreparable injury)
②法によって適用可能な補償だけでは、その損害を補うには不十分であること(remedies available at law are inade-quate to compensate for that injury)
③原告及び被告に与える困窮度合の均衡を考慮し、衡平法に基づく補償を認めるのが当然であること(considering the balanceof hardships between the plaintiff and defendant, a remedy in equity is warranted)
④差止を認めることによって公共の利益が害されないこと(the public interest would not be disserved by a permanent injunction)
差止による保護を認めるか又は拒否するかの決定は、地裁による衡平法上の裁量行為である。裁量の濫用に対しては、上訴によって再審理できる。この原則は特許法における争いにも適用される。衡平法の実務運用の永い伝統を変えるものではない。』
そこで、本事件について、地裁の判断を再検証する。
1)①Irreparable Harm and ②Lack of Adequate Remedy at Law
Acumed社は2つの大きな間接競業会社(スミスとジムマー)に444特許のライセンスを行っている。Acumed社のライセンスを行った意図はスミスに対する訴訟の和解のためであり、適正補償は合理的実施料による金銭的補償でなされたことを示しているとStryker社は主張した。だから直接の競業会社にライセンスしなかったことを主張することは禁反言で許されないのである。また、過去の3つの判例(遺失占有市場に基づき差止を認めた判例)に依拠したのは誤りであるともStryker社は主張した。
これについて、CAFCは、特許権は、競業会社の侵害行為を排除するためのものである。このような観点から、回復不能な損害が生じ、それを法律的な補償だけでは補えないことも起こりえる。権利者は侵害の補償として合理的実施料を示して特許ライセンスをすることもできるが、それは地裁の判断できる一つのことに過ぎない。先行するライセンスの存在、過去の実施権者の特定、実施権者による市場での知識技術、および新たな侵害者の登場は、侵害の補償として合理的実施料が十分な補償になっているかどうかの判断に影響する。金銭的な損害賠償は過去のStrykerの侵害行為についてだけのものである。将来の侵害についての法的補償がなされていない。そのために、地裁は差止が必要であると判断したのである。
地裁はAcumed社の行った2つのライセンスについて重きをおいてないので、検討する。スミスに対するライセンスはスミスに対する訴訟における和解で行われた。ジムマーに対するライセンスがなされたときジムマーは直接的な競業会社ではなかった。けれどもいずれも地裁の管轄下で行われている。特許をライセンスしたという過去における特許権者の意図は、新たな侵害者に対してライセンスすれば回復不能な損害が生じないことを意味していない(最高裁)。
444特許についての先行する二つのライセンスは、新たな競業会社であるStryker社にライセンスして、その補償として実施料だけを受け取ればよいということを意味していない。
そして、地裁が依拠した3つの判例はe-Bay後になされたものである。地裁の判断に裁量権の濫用はない。
2)③Balance of Hardships
「T2PHN」の製造、使用、販売、販売申出および輸入を禁止することがStryker社、顧客および患者に甚大な困窮をもたらすことを地裁は見落としているとStryker社は主張した。ライセンスしている二つの会社はStryker社と同程度の大きさであり、Acumed社はそれらによって支障をきたしてない。Stryker社の顧客の多くはAcumed社と取引できないので、Acumed社は二社の実施料を受け取ることで利益を得ているとStryker社は主張した。
一方、Stryker社は世界的にも大きな企業であり、「T2PHN」はStryker社の売り上げのほんの一部に過ぎないとAcumed社は主張した。Acumed社の「Polarus」は旗艦商品である。また、Stryker社は「T2PHN」以外の非侵害設計品をオプションとして持っていて、その設計品を適用することで困窮を低減できるとAcumed社は主張した。
これについて、CAFCは、まず困窮のバランスは原告と被告との間の問題である。だから、顧客や患者の困窮はバランス判断においては関係ない考慮事項である。Acumed社の主張にCAFCは同意する。
3)④Public Interest
本事件では、Stryker社が「T2PHN」は「Polarus」よりも安全で優れていると主張した。外科医の証言や宣誓書、「Polarus」の治験などが証拠として示され、「Polarus」には、「screw back-out」の問題があると指摘した。また、スクリュー式の代替品の存在をAcumed社が主張するのは禁反言に反するとStryker社は主張した。
これについて、CAFCは、バイアスされた証言であるか否かについて考慮すべき点があるとし、公衆衛生の問題について十分な証拠は示されていないとした地裁判断を支持した。また、実施権者のジムマーのくぎなどが代替品としてあることをStryker社は認めざるを得なかった。Acumed社の主張にCAFCは同意する。
B.Stryker社はAcumed社の提出した新証拠及び新主張(時機に遅れた主張)を認めるべきでないとの申立を拒否した件について
一般的に、裁判所は、答弁に対して相手方に反論する機会を与えずに、該答弁における新たな主張や証拠を考慮すべきでないといわれている。
本事件では、Stryker社が提出した新たな証拠に対する応答機会をAcumed社に与えAcumed社が新たな証拠を付けて応答しているが、該Acumed社の応答に対してStryker社に書面による応答機会を与えていない。しかし、Acumed社の新たな証拠については口頭による反証機会がStryker社に与えられている。よって、地裁の決定に裁量権濫用はない。
以上の理由により、地裁の差止請求を認める判決を支持する。
以上。
102条 Anticipation
Rader, Bryson and Linn (判決:Rader)
(概要)無線通信機器に使われるチップに関する特許権に係る製品の輸入を誘導しているとして、Broadcom社がQualcomm社などを、ITCに申し立て件について、ITCがなした“limited exclusion order”は関税法337条に照らして許されないとCAFCは判断した。ITCは要件を満たすならば“General exclusion order”を成すことができる。
また、B社特許は、GSM規格の明細書によってanticipation(新規性が無い)ということはできない。GSM規格の明細書は異なる時に異なる立案者が作ったものであるから、102条における単一引用例とはならない。
以上。
Cohesive Technologies, Inc. v. Waters Corp. CAFC 2008-1029 October 7, 2008
Mayer, Linn, and Prost、判決Linn
(概要)C社がW社を液体クロマトグラフィー装置に関するUSP5772874およびUSP5919368の侵害で地裁に提訴した。先ず、C社はW社の30μmのクロマトカラムは874特許を侵害していると主張した(第一事件)。次にC社はW社の30μmのクロマトカラムは368特許を侵害していると主張した(第二事件)。さらに、C社はW社の25μmのクロマトカラムは874特許および368特許を侵害していると主張した(第三事件)。
第一事件について、陪審は、874特許は無効でなく30μmのクロマトカラムは874特許を侵害しているとの評決をした。次いで、地裁は第一事件における損害賠償、故意侵害、不公平行為に関するベンチトライアル(公判)とヒアリング(審尋)と、第二事件および第三事件における仮差止、略式判決の申立とを併合した。
第一事件についてはC社の主張を認め、第二事件についてはC社の求めた権利有効および権利侵害の略式判決の申立を認め、損害賠償も認めた。しかし、第三事件について、W社の求めた25μmのクロマトカラムはいずれの特許権も侵害してないとのW社の略式判決の申立を認めた。両当事者は控訴した。CAFCでは、C社特許について、自明(Obviousness)でないときに、先行技術により予期可能(Anticipation)であるとできるかどうかが一つの争点となり、意見が分かれた。多数意見は、10年掛かった事件で地裁が、Non-Obviousnessの評決によってAnticipationが排除されるとすることは必ずしも正しくないと、結論した、Anticipationに関する判決例を挙げ、商業的成功などの二次的考慮の観点で自明Obviousでないが一世紀前の錬金術の教科書(合金の記述はないが、実際に行えばクレームされた合金が正確に得られる製法が記載されている。)によって公知Anticipationである合金の例を挙げた。少数意見MayerはクレームがObviousnessで無いならば、Anticipationとはできないと反対意見を述べた。
(背景)
368特許は874特許の分割出願によるものである。
874特許のクレーム1は、
Chromatography apparatus comprising, in combination, a chromatographic body formed as a substantially uniformly distributed multiplicity of rigid, solid, porous particles with chromatographically active surfaces, said particles having average diameters of greater than about 30 μm, the interstitial volume between said particles being not less than about 45% of the total volume of said column; and means for loading said surfaces with at least one solute that is reactive with said surfaces, by flowing a liquid mixture containing said solute through said body at a velocity sufficient to induce flow of said mixture within at least a substantial portion of said interstitial volume at a reduced velocity greater than about 5,000. である。
両特許のクレームに共通する事項は、粒子particlesが、"rigid"で且つ約30μmより大きい粒径を持つことである。
2001年に地裁は第一事件について16日間の陪審公判を開いた。そのときに、W社は874特許は7つの引例それぞれから予見可能(Anticipation)であると主張した。また874特許はこれら引例から自明であるとも主張した。ところが地裁は、W社はObviousnessについて主張しており、Anticipationは、Obviousnessの一部であると考えて、Anticipationの争点を陪審に提示しなかった。すなわち、地裁は874特許はAnticipationではないとの判断を陪審に示したに等しいことをした。陪審は30μmクロマトカラムは874特許を侵害しており、874特許は自明でないとの評決を返した。
この評決の前にW社は30μmカラムの販売を止め、25μmカラムの販売を行っていたので、C社は25μmカラムが874特許および368特許の侵害であるとの主張(第三事件)を行った。
2002年、3つの事件を併合して、公判および審尋が行われた。5年後、地裁は3つの事件についての争点を処分するメモと命令を出した。C社およびW社は控訴した。
(CAFC)
A:30μmカラム
(1)クレーム解釈:rigidについて、地裁は少なくとも約5000psiの圧縮力によって密度および体積が実質的に変化しないものおよびすなわちそのような力によって塑性変形しないものと解釈した。(なお、この解釈は宣誓供述書の記載から判断された。)また、rigidは、874特許の好適態様として示される単量体粒子に対するものとしての重合体粒子を除外するものでないと解釈した。
W社は、C社は審査において引用文献記載のものとの区別のために重合体粒子はrigidでないとのディスクレームをしたと主張した。
この根拠としてW社は、特許審査においてC社が提出した専門家の宣誓供述書を挙げた。しかし、該供述書では、引用文献記載の特定の重合体粒子がrigidでないことを示したにすぎなかった。よって、引用文献記載の特定重合体を除外したに過ぎないと認定した。
W社の30μmカラムの粒子はジビニルベンゼンとn-ビニルピロリドンとの共重合体であるが、引用文献に記載されている重合体粒子の一つではなく、宣誓供述書で区別を試みた重合体粒子でもなかった。
よって、rigidの解釈は地裁のとおりであるとCAFCは判断した。
(2)invalidity
①W社は、陪審にAnticipationの争点についての評決をさせずに、判事がおこなったことは誤りであると主張した。ただ、地裁は、Anticipationの争点を陪審に判断させないという意図ではなく、被告にとってAnticipationよりはObviousnessの点で争うほうが最適である考えた。地裁は証拠を見たときにAnticipationは不確実であり、直感的にW社が勝てそうもないと考えた。このようにすることが被告を不利にすることはないと、また、AnticipationはObviousnessに包含されるものであり、両者に相違はないと地裁は判断していた。
地裁は、W社が敢えてAnticipationを主張することが、訴訟上の戦略であることを理解していなかった。そのために、陪審にはObviousnessの争点だけが示され、評決はObviousnessについてだけ述べた。
CAFCは、先ず、この点で地裁は間違えていたと述べている。
②さらに、Obviousnessの判断のときにAnticipationの証拠となる引用文献を考慮する機会が陪審に与えられるからという単純な理由でAnticipationの争点を判事が行ってしまったのは間違いであるとCAFCは述べている。、
AnticipationはObviousnessの縮図(epitome)であるとの格言がしばしば引用されるが、元来、102の新規性と、103の非自明性とは、特許の要件において分かれている。よって、侵害事件においても、防御手段として、分けて考える。
一般には、Anticipationの引用文献はObviousnessの引用文献になるけれど、Non-Ovbiousnessの評決がAnticipationを排除するとするのは正しくない。Anticipationの判断基準とOvbiousnessの判断基準とは異なる。
Obviousnessは引用文献の組合せによって立証できる。一方Anticipationは単一引用文献にクレームの全構成が記載されていることが要求される。
Obviousnessは二次的考慮が要求されるが、Anticipationには二次的考慮はない。
AnticipationはInherentによる立証ができる。しかし、InherentによるAnticipationの立証はObviousnessの立証と異なる。
(3)その他
侵害性、不公正行為についての判断がなされた。
B:25μmカラム
(1)クレーム解釈:about(概ね、約)について
被疑侵害品25μカラムに用いられている粒子の粒径が争点となった。C社は、該社測定で平均粒径29.01μmであると主張した。一方のW社は、平均値の求め方によって、25.22μm、25.16μmとなると主張した。
クレームは「約30μmより大きい」と規定していた。
そこで、CAFCは「29.01μm」を超える「約30μmより大きい」の用語解釈をした。
「約」と付けたということは、「30μmより大きい」と規定よりも、若干の広がりを意図していたと考えるべきで地裁はその判断をしなかった。
では「約」とは、どの程度なのか? それを明確にするには、発明自身の目的ではなく、クレームされた発明においてそのように限定した目的を考慮する。約30μmという境界を下回ったときに、発明に及ぼす機能を考慮する。
まず、明細書には、粒径の下限は高流速の液体から化合物が吸着されることと関係していることが示され、乱流を生じさせる流速が効果ある旨が示されていた。実施例として10μm、20μm、50μmが示されていた。
粒子は、非球形(不定形)であり、大きさにバラツキがあるので、正確に平均粒径を求めることはできない。だから実際の平均粒径がばらついたとしても、名目上の平均粒径が30μmを超えたときに機能を発揮するものが下限値である。
だから実施例の20μmでは乱流が生じていないので「約30μm」には属しないことになる。
本願明細書には平均粒径42.39μmを平均粒径約50μmとして扱っている。だから約は、少なくとも15.22%のばらつきを許容している。30μmの15.22%のばらつき範囲は25.432~34.566μmである。
一方、乱流を生じない名目平均粒径20μmではそのばらつき範囲は16.956~23.044μmである。だから、「約30μm」は23.044μm以下であるはずがない。
23.044~25.432μmの間に境界線を引きたいが引くことができない。そこでCAFCは23.044~25.432μmの間についてはカラムにおいて乱流を生じさせるのに十分な大きさと解釈した。
結局、「約30μmより大きい」とは、「25.434μmより大きい」か、または「23.044μmより大きく且つカラムにおいて乱流を生じさせるのに十分な大きさと解釈した。
この解釈によれば、C社測定の平均粒径29.01μmは文言侵害していることになるであろう。しかし、W社測定の25.16μmについては乱流を生じさせるかどうかが要求されるので、略式判決で文言侵害であるとするのは不適切であろう。
CAFCは均等論を適用しないとした。理由として、aboutはクレーム範囲を広げることを意図して表現されたものであり、そのクレーム拡大によって均等の範囲(機能同一、作用同一および効果同一の範囲)が包含されてしまったと考えられる。
C:その他に損害賠償についても争われた。
CAFCは結論として、25μmカラムの非侵害略式判決を破棄(reverse)、Anticipationについての判事の判決を破棄、C社に実損害の賠償を認めないとした判決を取り消し(vacate)、そして地裁に差し戻した。他の地裁判決をCAFCは支持した。
以上。
NEWMAN, PLAGER, and SCHALL(判決PLAGER)
(概要)TLCがテレビジョンによって受信したビデオ信号から同期信号を分離する方法に関する特許権者である。
①先行出願日の利益の取得に論点があるときに、特許権者と被疑侵害者との間でどのように立証する責任が割り振られるのか。
②先行出願の記載は、後の出願においてクレームされた技術をサポートするか否か。
立証責任は、説得する最終責任と、証拠または主張を進める責任(提示の責任)とを含む。
立証基準は、preponderance of the evidence(優位な証拠による立証基準), clear and convincing evidence(明白で説得力ある証拠による立証基準),または、proof beyond a reasonable doubt(合理的疑いを超える立証基準)がある。
侵害の立証責任は権利者に、権利無効の立証責任は被疑侵害者にあり、責任を果たせなかった方が負ける。侵害立証の基準は責任はpreponderance of the evidence、無効立証の基準はclear and convincing evidenceである。立証責任者は立証に失敗すればその争点について負けることになる。
被疑侵害者は、当該特許に先行出願日利益がないことの争点についての立証責任があるが、一旦被疑侵害者が、該特許に先行出願日利益がないことについて争点で十分な証拠が提出された場合には、権利者は反対の証拠提出と主張をする義務がある。以上。
Star Scientific, Inc. v. R.J. Reynolds Tobacco Co.
CAFC 2007-1448 August 25, 2008
不公正行為事件における明白かつ説得力ある証拠による重要性と騙す意図の両方の閾値を示すことの要求を重視した。
MICHEL, SCHALL and DYK(判決MICHEL)
(概要)地裁は、権利者に不公正行為があったとして、権利行使不能とする判決をした。
CAFCは、地裁の判決は審理不十分であるから、差し戻した。
(背景)
生タバコをシガレット等にする前にcuringと呼ばれる乾燥工程を行わなければならない。
この乾燥方法として4つの方法が知られている。
1)空気curing : 熱を掛けずに乾燥した空気でタバコを乾かす方法
2)輻射熱curing : 火炎の排気熱風をパイプに通し、そのパイプからの輻射熱でタバコを乾燥する方法。
3)直接火炎curing : 火炎の排気熱風をタバコに直接吹き付けて乾燥する方法。
4)強制的空気間接火炎curing : 清浄な空気を火炎熱で熱し、加熱された清浄空気をタバコに吹きつけ乾燥する方法。
60年代、アメリカのタバコ会社は主に輻射熱curingを用いてタバコを乾燥させていた。そして、70年代までに、ほとんどのタバコ会社は直接火炎curingに切り替え、90年代後半まで、この方法が広く使われた。
乾燥タバコには多くの有害物質が含まれている。生タバコには含まれていない亜硝酸アミン類(TSNAs)のような発がん性物質も乾燥タバコには含まれている。
90年代になって、TSNAsの生成が、火炎直接curingに起因していることが分かった。
そこで、研究者はTSNAの生成が少ないcuring方法の開発を始めた。
1998年夏、Star社の発明者Williams氏は、TSNAsが生成しにくcuring法に関する出願をSughrue事務所のDelmendo弁護士に依頼した。
W氏はタバコ葉に付いた微生物の存在がTSNAs生成に影響しているとの仮説を立てた。この仮説によれば、直接火炎curingでは、二酸化炭素の生成によって生タバコ周辺の酸素が減り、微生物は嫌気性的な代謝を強いられる。すなわち、葉の劣化によって生成した硝酸塩の還元酸化反応によって酸素を得ようとする。この反応によって亜硝酸塩が生成し、さらにいくつかの反応を経てTSNAsに成ると考えた。
W氏の発明は、乾燥室内の空気流量、湿度、および温度を調整して酸素濃度の低下を減らすことによってTSNAsの生成を抑制し、微生物の嫌気性的な代謝を減らすものである。
1998年8月28日に、W氏の特許出願の準備のために、Star社のBurton博士が、Delmendo弁護士に書簡を送った。
この書簡には「中国製のタバコはTSNAsの含有量が少ないこと、及び、「アメリカでは60年代に廃れてしまったが、中国では未だに輻射熱によってタバコの葉の乾燥を行っており、TSNAsが少ないのはおそらくこのcuring法によるからであろうと思う。」と記載されていた。
Delmendo弁護士は、B博士と話をし、そして、この手紙の内容を分析した結果、出願に関連する重要事項でないと判断した。
1998年9月15日にDelmendo弁護士は仮出願を提出した。仮出願には「中国などの他国では依然として輻射熱乾燥法を使用している。」を記した。さらに「米国で採取されたタバコに輻射熱乾燥法を適用したが、その葉には高いレベルのTSNAsが含まれる。」ことを記述した。この記述は、W氏の推論に基づくものであった。この推論は、輻射熱法によって乾燥させたブラジルタバコには2~3ppmのTSNAが含まれているという、競合他社からの情報に基づくものであった。
・出願後、Williams氏は、アメリカの二つのタバコ農場から輻射熱法で乾燥されたサンプルを受け取った。一の農場サンプル(Jennings data)は、TSNAが1.0~1.5ppmであった。もう一つの農場サンプル(Curran data)は、TSNAが0.39ppmであった。Curran dataのサンプルは輻射熱法によって部分的な乾燥がされたものであったので、分析に先立ちマイクロ波で乾燥させたものであった。
Williams氏は、Delmendo弁護士にJennings dataを電話で伝えたが、その実際の数値データを書類で示さなかった。Curran dataについては、伝えなかった。Delmendo氏は、W氏と一緒に検討し、Jennings dataは、発明者の方法よりもTSNAを減少させる量が少なかったので、重要事項ではないと判断した。
1999年9月15日、本出願が提出された。仮出願の記述がほとんどそのまま引き継がれたが、「アメリカ産タバコ葉を輻射熱法で乾燥したものは、TSNAを高レベルで含む」旨の記述は削除された。一方で「比較的低速の空気流を乾燥室に送ることができる熱交換器を使用した火炎排気熱風による乾燥方法において火炎排気熱風を乾燥室に導入しないことによってTSNAを削減できること見出し、本発明はこの知見に基づくものである」と開示した。
D弁護士は、この新たな開示はW氏とJennings dataについて議論した結果であると証言している。
Williams氏とStar社は、本件の取り扱いをSughrue事務所からRivart弁護士及びHoscheit弁護士の居るBanner&Witcoff事務所に切り替えた。
Hoscheit弁護士はSughrue事務所のD氏及び他の弁護士と会い、書類の移転及び出願の状況を議論した。Rivard弁護士は先行技術を調査したがBurton書簡には気づかなかった。
2000年2月15日、R弁護士は上申書とともにIDSを提出した。このIDSにはBurton書簡は含まれていなかった。
2000年9月14日に特許許可通知がされ、2001年3月20日に6202649特許が発行された。
2000年9月25日、R弁護士は、継続出願を行った。親出願において提出した先行文献と同じものを添付したIDSを提出した。このIDSにはBurton書簡は含まれていなかった。
S社は、2001年5月23日にR.J. Reynolds Tabacco Company (R社)を649特許の発明を侵害しているとして提訴した。
649特許侵害事件のディスカバリーにおいてR社が提出した先行技術文献を継続出願の追加IDSとして提出した。さらにR社の無効主張に対して反論したものを特許庁に開示した。
2002年1月に継続出願は特許許可され、2002年4月に特許発行料を支払った。
特許発行を待っている間に、Rivard弁護士は、侵害事件の弁護士からの情報で、Burton書簡およびCurran dataの存在を知った。検討した結果、これらの情報は重要事項でないので、US特許庁に提出する必要は無いと判断した。
継続出願について、2002年7月30日に、425401特許が発行された。
S社は401特許の侵害主張を侵害事件の争点に加えた。
・地裁は、2007年6月26日に、Burton氏のレターは重要なものであり、Star社がそのレターを提出しなかったのはUS特許庁を欺く意図があったものであり不正行為があったと判断し、Star社の2つの特許は権利行使不能であると判決した。
S社は控訴した。
(CAFCの判断)
Ⅰ. 不公正行為
一般論: 被疑侵害者が権利者の不公正行為を立証する責任がある。
不公正行為の立証を成功させるために、被疑侵害者は、
(1)the applicant made an affirmative misrepresentation of material fact, failed to disclose material information, or submitted false material information, 重要事項の不実陳述、重要情報の不開示、または虚偽情報の提出(重要性)と、
(2)the applicant intended to deceive the [PTO].PTOを騙す意図と、
を示す証拠を提示しなければならない。
さらに、それぞれ(materialityおよびintent to deceive)についての閾値を明白且つ説得力ある証拠で立証しなければならない(Digital Control Inc. v. Charles Mach. Works, 437 F.3d 1309, 1313 (Fed. Cir. 2006)。
この引き上げられた立証責任を果たしたとしても、地裁は、equityの観点から、出願人は権利行使不能とされるほどにとんでもないことegregiousをPTOにしたか否かを決定しなければならない。
だから、明白かつ説得力ある証拠により重要性と騙す意図の両方の閾値を立証できたとしても、裁判所は権利行使不能との判決をしなくてもよい場合がある。
不公正行為によって権利行使不能とする罰則は、もともとは、特許庁に対する詐欺行為(Fraud on the Patent Office)の場合に適用されていたものである。特許性のある発明についての権利をすべて行使不能にするという厳しい罰則であるから、厳格な適用が要求される。
ところが、判例法によって、Fraudよりも軽い行為、不品行、不始末などの不公正行為にも適用が拡大されていった。罰則は同じ厳しさのままで,
そこで、明白かつ説得力ある証拠により、重要性と騙す意図の立証ということを要求するようになった。
重要性と騙す意図とは、別の要件事実である。すなわち、非開示の情報に重要性があるから騙す意図があったとは必ずしもしない。
重要情報は一つだけ開示すればよく、重複内容の文献を多数積み上げても意味がない。
騙す意図は、直接的または間接的な状況証拠によって判断される。
重要性と騙す意図とのバランスを考慮して判断している。
そして、罰則の厳しさと、重要性及び騙す意図とを、equityの観点で判断する必要がある。
本事件への適用: Star社は、シュグル事務所から変更した理由は主要パートナーの死亡であり、シュグル事務所の他の弁護士が本件を扱うには不十分であったと主張した。地裁は、この証言を信用できるものでは無いと、判断した。
しかしながら、RJR社は、単に、Star社が信頼できる説明をしなかったことを指摘するだけでは不十分であり、この申立を立証する必要がある(被疑侵害者の方が騙す意図及び重要性の明白且つ説得性のある証拠で立証しない限りは、特許権者は反証責任を負わない)。Star社は、シュグル事務所から変更する前にBurton氏の手紙が指摘したことを認識していた、ということを示す証拠をRJR社は示していない。また、その手紙が事務所を変更する理由であったということを示す証拠も示していない。したがって、PTOを欺く意図はなかったと判断する。(半導体研究所事件参照;重要事項をIDSで提出しようとしていた代理人を解任して、別の代理人によって審査手続を進めさせたとの事実が立証された。)
更に、Burton氏のレター及びCurran dataに関する情報は、既に提出されたものであり、したがって、その情報は重複した情報であるので重要なものではない、と判断する。
したがって、地裁が、両特許は権利行使不能であると判断したのは誤りである。
Ⅱ. 定義不明瞭(記載要件 112条2項)
本事件で争点となった649特許のクレーム4は下記のとおりである。
A process of substantially preventing the formation of at least one nitrosamine in a harvested tobacco plant, the process comprising:
drying at least a portion of the plant, while said portion is uncured, yellow, and in a state susceptible to having the formation of nitrosamines arrested, in a controlled environment and for a time sufficient to substantially prevent the formation of said at least one nitrosamine;
wherein said controlled environment comprises air free of combustion exhaust gases and an airflow sufficient to substantially prevent an anaerobic condition around the vicinity of said plant portion; and
wherein said controlled environment is provided by controlling at least one of humidity, temperature, and airflow.
地裁はanaerobic conditionの定義が不明瞭であるとして、特許無効と判断した。
控訴における争点になっていないが、CAFCはこの判断について、次のように述べている。
112条2項が要求するクレームの明確性は、「請求の範囲には、出願人が発明であるとする事項を特定し、明確に記載する」ことに基づくものである。
先例においては、クレームの記載が、解釈に耐えられない場合(amenable to construction)又は解決不能に多義的(insolubly ambiguous)である場合にだけ、indefinite(不明瞭)であるとしてきた。
クレーム解釈が困難であるということだけで、クレームの用語が不明瞭とはしていない。
度合いを表す用語を用いた場合には、その度合いを測定するための基準を明細書に記述しなければならないと、先判例で述べてきた。
本事件において地裁は、anaerobic conditionが、微生物の硝酸還元活性を発生させる、酸素の欠乏状態を意味していると解釈した。
anaerobic conditionは酸素欠乏状態の度合いを示していると言える。
また、地裁は、substantially prevent the formation of said at least one nitrosamineを、NNNが約0.05μg/g未満、NAT+NAGが約0.10μg/g未満、NNKが約0.05μg/g未満を満たすNTSAの発生量にすることであると解釈した。
このNTSAの発生量は4つの化合物だけの測定結果を考慮している。
だから、anaerobic conditionは、TSNAの発生量によってその輪郭が明確になっており、定義不明瞭ではない。よって地裁の判断は誤りである。
以上。
(補遺)
情報開示義務(Information Disclosure Statement)
と不公正行為(Inequitable conduct)
情報開示義務:
◎対象となる出願:
通常出願(植物特許出願、意匠出願も含む)
reissue、reexamination
継続出願、分割出願、CIP出願
(親出願の審査で考慮された文献については再度提出する必要はない。考慮されていない文献については、再度提出する必要がある。
RCEについては、その出願の審査で考慮された文献については再度提出する必要はない。
PCT移行出願における国際調査報告で引用された文献については審査官が必然的に考慮するので提出する必要がない。
◎IDS提出の義務を負う者
発明者
出願の準備または手続を行った弁護士または弁理士
実質的に出願の準備または手続に関わった者(知的財産部員等)
◎提出時期
1)出願日(PCT移行日)から3ヶ月・1st OAの発送日のいずれか遅い方の前
無料
2)Final OA/NOAの発送前
statementの提出(提出の3ヶ月以内に対応外国出願のアクションにおいて引用された文献、提出の3ヶ月以上前には開示義務を負う者が知らなかった文献)
feeの支払(上記以外の文献)
3)Final OA/NOAの発送後~Issue Feeの支払前
feeの支払+statementの提出
4)Issue feeの支払い後
特許発行前は、RCEにpetition (issueの取下を申請するもの)をつけてIDSを提出することができる。
特許発行後は、情報開示義務がなくなるのでIDSを提出する必要ないが、特許性について疑義が生じるようなものであれば、reexaminationを行い、審査官にその文献を考慮してもらうのがよい。
◎提出するもの
文献のリスト
文献のコピー
非英語文献に対する関連性についての英語による簡単な説明
◎情報開示義務怠惰
fraudであるとして、その特許に係るすべてのクレームがunpatentableまたはinvalidとなる。
不公正行為:
重要性 × 詐欺的意図
(背景)
特許権者LGとIntelは、LG特許(コンピュータ)を実施するためのマイクロプロセッサおよびチップセットの製造販売をIntelに許諾する旨および特許消尽を修正する意図はない旨のライセンス契約を締結した。
LGとIntelは別の基本契約書において、該ライセンスはIntel製マイクロプロセッサおよびチップセット(特許部品)をIntel製以外の部品と組み合わせてコンピュータを製造することにまで拡大適用されないとの通知書をIntelが顧客に与えることを要求していたが、基本契約の不履行によってライセンス契約は影響しないことになっていた。
Intel社はQuanta社に特許部品を販売した。Q社はIntelから購入した特許部品をIntel製以外の部品と組み合わせてコンピュータを製造し販売した。
LGはQuantaを特許権侵害で提訴。
CAFCは、方法の特許権には消尽論は適用されない。LGは、Intel製以外の部品と組み合わせたQuantaに特許部品を販売することを、Intelにライセンスしていない。としてQuantaはLG特許権を侵害していると判決した。
Quantaは上告した。
(最高裁)
最高裁はこのCAFCの判断を却下した。すなわち、LG特許を実施するための特許部材を販売したことでLG特許は消尽したと最高裁は判断した。
最高裁は、(1)方法特許にも消尽論を適用する。(2)もし製品が特許発明を実質的に具現化する物である場合はその製品によって消尽を引き起こさせる。(3)Intel社からQ社への販売はLGによって許されたものである。と判断している。
特許された方法は、機械装置の販売方法と同じ方法で販売されることはないが、方法が具現化される製品の販売が特許権を消尽させる。LG特許を実施するために必要なものは、前記特許部品以外には通常のプロセスまたは汎用部品があればよく、該特許部品の実施が当にLG特許の具現化に他ならない。
特許製品が、一旦、適法に製造し販売された場合には、特許権者の利益のために暗に示された製品の使用法についても制限を受けることはない。
特許権が消尽されるためには、特許権者から許可された販売がなされていなければならない。ライセンス契約は、Intel製以外の部品と組み合わせてコンピュータを製造するための特許部品の販売を制限していない。顧客に対して通知することが求められているだけで、それの不履行によってライセンス契約が破棄されることになっていない。すなわち、Intelは特許部品をIntel製以外の部品と組み合わせてコンピュータを製造しようとしている第三者へ販売することをLGから許されていることになる。Intelの特許部品の販売は特許権を既に消尽させており、LGによる暗黙のライセンスが第三者に対して為されたか否かは関係ない。
実験成績証明書⇒不公正行為⇒権利行使不能
Rader, Prost, Moore (判決:Prost)
血液凝固剤"Lovenox"をカバーする特許権(USP5389618)の侵害でAventis社がAmphastar社を提訴した。地裁はAventisは不公正行為により権利行使できないと判断した。Aventis社は控訴した。
特許審査中に、Aventis社の従業員Uzan博士が、USPTOに、従来技術よりもAventisの特許薬品は半減期が長いことを実験成績証明書で示した。
しかし、Uzan博士が示したデータは、異なる処方量による半減期の実験結果であった。
実際は、同じ処方量での対比において、半減期はほとんど変わらないものであった。
CAFCは、Uzan博士が異なる処方量におけるデータを示したのは故意ではなく、うっかりによるものであるとの主張を退け、騙す意図に関する地裁の判断に誤りは無いとして、地裁判断を支持した。
以上。
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